Scene 04 · Notes

解説 場面 4「再会」

この場面の解説

部屋に通されたワトソンを、ホームズは言葉少なに迎える。そしてワトソンの体重の増加や、医業に復帰したことを次々と言い当てはじめる。

表現・文法のポイント

His manner was not effusive
effusive は「感情をあふれるように表す、大げさな」。not effusive で「熱烈な歓迎ではなかった」となる。続く It seldom was は It (= his manner) seldom was effusive の省略で、「めったにそうではなかった」の意味だ。
Wedlock suits you
wedlock は「婚姻(状態)」を表すやや古風で硬い語。suit は「〜に似合う、合う」。結婚生活がきみには合っているね、という軽い冷やかしで、太ったことをほのめかしている。
seven and a half pounds
pound はここでは重さの単位ポンド(約450グラム)で、7.5ポンドは約3.4キロ。直後のワトソンの Seven! は「7ポンドだよ」と訂正している。ホームズはそれでも「もう少し多いはずだ」と譲らない。
go into harness
harness は馬具。馬具をつけて働きに出ることから、go into harness で「仕事に就く、働きはじめる」という比喩になる。ここでは医者の仕事に戻ることを指している。

背景・時代

ガソジーン(gasogene)
炭酸水を作るための家庭用の器具で、上下二つのガラス球をつないだ形をしている。spirit case(酒瓶のケース)と並べて置かれ、ウイスキーなどを炭酸水で割って客に勧めるのが当時の紳士のもてなしだった。

全文の対訳

His manner was not effusive. It seldom was; but he was glad, I think, to see me. With hardly a word spoken, but with a kindly eye, he waved me to an armchair, threw across his case of cigars, and indicated a spirit case and a gasogene in the corner. Then he stood before the fire and looked me over in his singular introspective fashion.

彼の態度は大げさではなかった。大げさだったためしはほとんどない。それでも、私に会えて喜んでいたと思う。言葉はほとんど交わさなかったが、やさしい目つきで、彼は私に肘掛け椅子をすすめ、葉巻の箱を放ってよこし、部屋の隅の酒瓶台とソーダ水製造器を指し示した。それから暖炉の前に立ち、彼独特の考え込むようなやり方で、私をじっくりと眺めた。

"Wedlock suits you," he remarked. "I think, Watson, that you have put on seven and a half pounds since I saw you."

「結婚生活が性に合っているようだね」と彼は言った。「ワトソン、この前会ったときから七ポンド半は太ったんじゃないかな」

"Seven!" I answered.

「七ポンドだよ」と私は答えた。

"Indeed, I should have thought a little more. Just a trifle more, I fancy, Watson. And in practice again, I observe. You did not tell me that you intended to go into harness."

「そうかい。もう少し多いと思ったけれどね。ほんのちょっとだけ多いと思うよ、ワトソン。それに、また開業しているようだね。仕事に戻るつもりだなんて、聞いていなかったよ」

"Then, how do you know?"

「じゃあ、どうして分かるんだい」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • effusive(イフュースィヴ)… 感情をあふれさせる・大げさな難
  • gasogene(ギャソジーン)… ソーダ水製造器(19世紀の家庭用炭酸水器具)難
  • introspective(イントロスペクティヴ)… 内省的な・考え込むような難
  • wedlock(ウェドロック)… 結婚生活(やや古風)難
  • indicated(インディケイティッド)… 指し示した
  • singular(スィンギュラー)… 奇妙な/独特の
  • remarked(リマークト)… 言った・述べた
  • intended(インテンディッド)… 〜するつもりだった

次の場面:見て推理する I See, I Deduce

ワトソンの近況を次々に言い当てるホームズ。最近ずぶ濡れになったこと、さらに不器用でそそっかしい女中がいることまで指摘され、ワトソンは驚きを隠せない。服はとうに着替えているのに、なぜ分かるのか。問い詰められたホームズは、長い両手をこすり合わせてひとり笑う。