Scene 07 · Notes

解説 場面 7「見ると観察」

この場面の解説

ワトソンは、説明されれば簡単なのに自分では見抜けないと笑う。ホームズは「きみは見てはいるが観察していない」と言い、階段の段数を問いかける。

表現・文法のポイント

I could not help laughing
cannot help ~ing で「~せずにはいられない」。help はここでは「避ける」の意味だ。ホームズがいとも簡単に推理を説明してみせるので、思わず笑ってしまった、ということ。
the ease with which he explained
前置詞+関係代名詞の形。he explained ... with ease(簡単に説明した)の with ease が前に出て the ease を修飾している。「彼が説明したその手軽さ」→「いとも簡単に説明するさま」となる。
You see, but you do not observe
この物語でもっとも有名なせりふの一つ。see は「目に入る」、observe は「注意して観察し、意味を読み取る」。同じ「見る」でも、ぼんやり見ることと観察することの違いをホームズは強調している。
throwing himself down into an armchair
throw oneself into ~ で「~に身を投げ出す」→「どさりと座る」。分詞構文で、lighting a cigarette と並んで答えながらの動作を描いている。くつろいだ様子が目に浮かぶ表現だ。

背景・時代

紙巻きたばこ
ホームズはパイプ愛用のイメージが強いが、原作では紙巻きたばこも葉巻もよく吸う。前の場面でワトソンに葉巻入れを放ってよこし、ここでは自分は紙巻きに火をつけている。

全文の対訳

I could not help laughing at the ease with which he explained his process of deduction. "When I hear you give your reasons," I remarked, "the thing always appears to me to be so ridiculously simple that I could easily do it myself, though at each successive instance of your reasoning I am baffled until you explain your process. And yet I believe that my eyes are as good as yours."

推理の道筋をいとも簡単に説明してみせる彼に、私は笑わずにいられなかった。「きみが理由を説明するのを聞くと」と私は言った。「いつも馬鹿ばかしいほど簡単なことに思えて、自分にも楽にできそうな気がするんだ。ところが、きみが推理してみせるたびに、説明してもらうまではさっぱり分からない。それでいて、目のよさならきみに負けないと思うんだけどね」

"Quite so," he answered, lighting a cigarette, and throwing himself down into an armchair. "You see, but you do not observe. The distinction is clear. For example, you have frequently seen the steps which lead up from the hall to this room."

「そのとおり」と彼は答え、紙巻きたばこに火をつけて、肘掛け椅子にどさりと身を沈めた。「きみは見てはいるが、観察してはいない。その違いははっきりしている。たとえば、玄関からこの部屋へ上がってくる階段を、きみは何度も見ているね」

"Frequently."

「何度もね」

"How often?"

「何回くらいかね」

"Well, some hundreds of times."

「そうだな、何百回かな」

"Then how many are there?"

「では、何段あるかね」

"How many? I don't know."

「何段かって?知らないよ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • baffled(バッフルド)… 途方に暮れた・まごついた難
  • ridiculously(リディキュラスリー)… ばかばかしいほど・とんでもなく
  • distinction(ディスティンクション)… 違い・区別
  • successive(サクセッシヴ)… 連続する・次々の
  • frequently(フリークェントリー)… しばしば・頻繁に
  • deduction(ディダクション)… 推論・推理・控除
  • reasoning(リーズニング)… 推理する
  • remarked(リマークト)… 言った・述べた

次の場面:桃色の手紙 The Pink Note

ホームズは、階段が十七段あることを知っていると言う。見るだけでなく観察しているからだ。そして、ささやかな事件を記録してくれるワトソンなら興味を持つだろうと、最終便で届いた厚手の桃色の便箋を放ってよこし、読み上げるよう頼む。手紙には日付も署名も住所もない。