Scene 10 · Notes

解説 場面 10「透かし模様」

この場面の解説

ワトソンは紙が高価で妙に丈夫なことから書き手は裕福だと推す。ホームズは英国の紙ではないと言い、明かりにかざさせると、紙の地にいくつかの文字が織り込まれていた。

表現・文法のポイント

well to do
「裕福な、暮らし向きのよい」という意味の成句。名詞の前ではハイフンでつなぎ a well-to-do family のように使う。presumably(おそらく)を添えて、ワトソンの推理がまだ自信なさげなのが分かる。
half a crown a packet
a packet の a は「~につき」の意味で、「一包みあたり半クラウン」。half a crown は冠詞の位置に注意で、a half crown ではなく half a crown と言うのが普通である。
Peculiar—that is the very word
ワトソンが何気なく使った peculiarly(妙に)をホームズが拾い上げる。the very word は「まさにその言葉」で、very が名詞を強める用法。「妙だ」という感覚こそ手がかりだという指摘である。
What do you make of that?
make A of B で「B を A と解釈する、どう考える」。「それをどう見る?」と相手の考えを問う決まり文句で、ホームズが何度も口にする。答えは I make nothing of it(さっぱり分からない)などとなる。

背景・時代

半クラウン
クラウンは5シリング相当の英国の硬貨単位で、半クラウンは2シリング6ペンスにあたる。当時の1ポンドは20シリングなので、その8分の1。便箋一包みの値段としてはかなりぜいたくだ。
透かし(watermark)
紙をすく段階で厚みに差をつけて入れる模様や文字で、光にかざすと浮かび上がる。高級紙には製造元の名や印を入れることが多く、紙の出どころを知る手がかりになる。

全文の対訳

"The man who wrote it was presumably well to do," I remarked, endeavouring to imitate my companion's processes. "Such paper could not be bought under half a crown a packet. It is peculiarly strong and stiff."

「これを書いた男は、たぶん裕福なんだろう」と私は、友人のやり方をまねようとしながら言った。「こんな紙は、一包み半クラウン以下では買えないよ。妙に丈夫で、張りがある」

"Peculiar—that is the very word," said Holmes. "It is not an English paper at all. Hold it up to the light."

「妙に、か。まさにその言葉だよ」とホームズは言った。「これはイギリスの紙などではないんだ。明かりにかざしてごらん」

I did so, and saw a large "E" with a small "g," a "P," and a large "G" with a small "t" woven into the texture of the paper.

そうしてみると、紙の地に、大きな「E」と小さな「g」、「P」、それに大きな「G」と小さな「t」が織り込まれているのが見えた。

"What do you make of that?" asked Holmes.

「これをどう見るかね」とホームズが尋ねた。

"The name of the maker, no doubt; or his monogram, rather."

「製造元の名前だろうね。いや、むしろその頭文字の組み合わせかな」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • endeavouring(エンデヴァリング)… 努めながら・試みながら(米綴りは endeavoring)難
  • monogram(モノグラム)… モノグラム(頭文字を組み合わせた図案)難
  • companion's(カンパニアンズ)… 相棒の・連れの
  • presumably(プリジューマブリ)… おそらく・たぶん
  • peculiarly(ピキューリアリ)… 特に・妙に
  • processes(プロウセスィズ)… (思考の)やり方・過程(複数)
  • remarked(リマークト)… 言った・述べた
  • peculiar(ピキューリア)… 独特な・奇妙な・特有の

次の場面:地名辞典 The Gazetteer

透かしの文字は製造元の名ではない、とホームズは言う。小さなtのついたGはドイツ語の「会社」、Pは「紙」の略だ。残るEgを確かめるため、彼は棚から大陸地名辞典を取り出し、ボヘミアの町エグリアを探し当てる。ガラス工場と製紙工場で知られる町だ。ワトソンは紙の出どころに気づく。