Scene 14 · Notes

解説 場面 14「重い足音」

この場面の解説

ホームズはワトソンを引き止め、肘掛け椅子に座らせる。ゆっくりと重い足音が階段から廊下を上ってきて戸口で止まり、威厳のあるノックが響く。ホームズは「どうぞ」と客を招き入れる。

表現・文法のポイント

Never mind him.
「彼のことは気にしなくていい」。前の場面でワトソンが「でも依頼人が…」と言いかけたのに答えている。Never mind は「気にするな、構わない」の決まり文句で、相手の心配を軽く払いのける。
and so may he
so +助動詞+主語の倒置で「彼もまたそうかもしれない」。前の I may want your help を受け、he may want your help, too を短く言っている。So do I(私もです)と同じ形である。
a loud and authoritative tap
authoritative は「威厳のある、有無を言わせない」。tap は本来「軽くたたく」音だが、そこに loud と authoritative を重ね、ノックだけで人を従わせる立場の人物らしさを匂わせている。

背景・時代

ベーカー街の部屋
ホームズとワトソンの部屋は二階にあり、客は玄関から階段を上ってくる。前の場面でホームズは階段が十七段だと言っており、足音が近づいてくる間の緊張がよく伝わる場面である。

全文の対訳

"Never mind him. I may want your help, and so may he. Here he comes. Sit down in that armchair, Doctor, and give us your best attention."

「依頼人のことは気にしなくていい。きみの助けが要るかもしれないし、彼もそうかもしれない。ほら、来たよ。先生、その肘掛け椅子に座って、しっかり注意を向けていてくれたまえ」

A slow and heavy step, which had been heard upon the stairs and in the passage, paused immediately outside the door. Then there was a loud and authoritative tap.

階段から廊下へと聞こえていた、ゆっくりとした重い足音が、扉のすぐ外で止まった。それから、大きく威厳のあるノックの音がした。

"Come in!" said Holmes.

「どうぞ」とホームズが言った。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • authoritative(オーソリタティヴ)… 威厳のある・権威ある・信頼できる
  • immediately(イミーディエットリ)… すぐ(そば)に・直ちに
  • passage(パッスィジ)… 廊下・通路・(文章の)一節
  • paused(ポーズド)… 立ち止まった・一時停止した
  • upon(アポン)… 〜の上に(on のやや改まった形)

次の場面:仮面の大男 The Masked Giant

部屋に入ってきたのは、身の丈六フィート六インチはありそうな大男だ。アストラカンの毛皮を渡した上着、炎の色の絹で裏打ちした深い青のマント、毛皮で縁取った長靴と、英国なら悪趣味に見えるほど豪華な装いである。しかも顔の上半分を黒い仮面で隠している。