Scene 17 · Notes

解説 場面 17「秘密の誓い」

この場面の解説

ホームズはワトソンを引き止め、二人そろって話を聞くと言い切る。伯爵は二人に二年間の秘密を誓わせ、名乗った称号が本当は自分のものではないと認めるが、ホームズはそれを知っていたと返す。

表現・文法のポイント

It is both, or none
「二人ともか、どちらもなしかだ」。both と none を対にした簡潔な言い方で、ワトソンを外すなら自分も話を聞かないという意思表示になる。主語の It は「話を聞く相手」くらいの漠然とした状況を指している。
binding you both to absolute secrecy
bind 人 to 〜 は「人を〜に縛る、義務づける」。bind you to secrecy で「秘密を守ると約束させる」という決まった言い方になる。absolute は「絶対の」で、事の重大さを強調している。
The august person who employs me
august は月の名ではなく、アクセントを後ろに置いて「威厳のある、高貴な」という形容詞。国王のような身分の高い人を遠回しに指す語で、自分は使いにすぎないという建前を保ちながら、相手の正体をほのめかしている。
said Holmes dryly
dryly は「そっけなく、皮肉まじりに」。感情を表に出さず淡々と言うさまを表す。称号が偽りだという告白に「存じておりました」と返すことで、相手の正体などお見通しだというホームズの余裕が伝わる。

背景・時代

ワトソンの同席
依頼人は二人きりでの相談を望んだが、ホームズはワトソンを同席させると譲らない。ワトソンを単なる同居人ではなく信頼できる協力者として扱っていることが分かり、二人の関係がよく表れた場面である。

全文の対訳

I rose to go, but Holmes caught me by the wrist and pushed me back into my chair. "It is both, or none," said he. "You may say before this gentleman anything which you may say to me."

私は席を立とうとしたが、ホームズは私の手首をつかんで椅子に押し戻した。「お聞きするなら二人そろってです。さもなければ、どちらもお聞きしません」と彼は言った。「私に話せることなら、何でもこの人の前で話してかまいません」

The Count shrugged his broad shoulders. "Then I must begin," said he, "by binding you both to absolute secrecy for two years; at the end of that time the matter will be of no importance. At present it is not too much to say that it is of such weight it may have an influence upon European history."

伯爵は広い肩をすくめた。「では、まず」と彼は言った。「二人には二年間、絶対に秘密を守ると誓ってもらわねばならない。二年たてば、この件はもう何の意味もなくなる。だが今は、ヨーロッパの歴史を動かしかねないほど重大な事柄だと言っても、言い過ぎではないのだ」

"I promise," said Holmes.

「お約束します」とホームズは言った。

"And I."

「私もお約束します」

"You will excuse this mask," continued our strange visitor. "The august person who employs me wishes his agent to be unknown to you, and I may confess at once that the title by which I have just called myself is not exactly my own."

「この仮面のことは許してもらいたい」と奇妙な客は続けた。「私を遣わした高貴なお方は、使いの者の素性を君たちに知られたくないとお望みなのだ。それに、すぐに打ち明けてしまうが、いま名乗った称号は、正確には私のものではない」

"I was aware of it," said Holmes dryly.

「存じておりました」とホームズはそっけなく言った。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • importance(インポータンス)… 重要性・重大さ
  • influence(インフルエンス)… 影響・影響力
  • shrugged(シュラッグド)… (肩を)すくめた
  • absolute(アブソルート)… 完全な・絶対的な
  • binding(バインディング)… (約束で)縛ること・拘束する(bind の -ing 形)
  • secrecy(スィークレスィ)… 秘密厳守・内密
  • employs(インプロイズ)… 雇っている・使う
  • confess(コンフェス)… 打ち明ける・告白する・白状する

次の場面:ボヘミア王家 The House of Ormstein

伯爵は、事が大きな醜聞に育てばヨーロッパのある君主家が深く傷つくと語り、ボヘミアの世襲の王家オルムシュタイン家が関わっていると明かす。ホームズは「それも存じておりました」とつぶやき、目を閉じて椅子に沈み込む。驚く客を前に、ホームズは目を開け、相手を「陛下」と呼ぶ。