Scene 22 · Notes

解説 場面 22「動かぬ証拠」

この場面の解説

国王は手紙が本物である証拠として、専用の便箋や印章を挙げるが、ホームズはことごとく退ける。だが二人で並んで写った写真があると聞くと、さすがのホームズも声を上げる。

表現・文法のポイント

My private note-paper.
note-paper は手紙を書くための便箋。private はここで「私用の、専用の」の意味だ。身分の高い人は紋章などを刷り込んだ専用の便箋を使ったので、本人のものである証拠になると国王は考えた。
"Stolen."
It was stolen. の主語と be 動詞を省き、過去分詞だけで答えている。続く Imitated. や Bought. も同じ形だ。一語ずつ切り返す短い応酬が、国王の反論をあっさり片づけるホームズの冷静さを際立たせる。
We were both in the photograph.
「写真に写っている」は英語では be in the photograph と前置詞 in で表す。both は主語 We と同格で「二人とも」。便箋や印章と違い、言い逃れのできない決定的な証拠であることが伝わる。
committed an indiscretion
commit an indiscretion は「軽率なことをしてしまう」。indiscretion は分別のなさ、特に人目をはばかる男女関係の過ちを遠回しに言う語だ。国王に対し、はっきり非難せず婉曲に言うところにホームズの言葉選びの妙がある。

背景・時代

印章
印章(seal)は、手紙の封に垂らした溶かした蝋に押しつけて紋章などを刻むためのもの。持ち主を示し、手紙が途中で開けられていないことを保証する役目があった。
写真
当時の写真は写真館で改まって撮るのが普通だった。男女が並んで写った写真は、二人が親しい間柄だったことを示す確かな証拠になり、筆跡や便箋のように偽物だと言い逃れることは難しい。

全文の対訳

"My private note-paper."

「私専用の便箋だ」

"Stolen."

「盗まれたものです」

"My own seal."

「私自身の印章だ」

"Imitated."

「まねられたのです」

"My photograph."

「私の写真だ」

"Bought."

「買ったのでしょう」

"We were both in the photograph."

「二人で一緒に写っているのだ」

"Oh, dear! That is very bad! Your Majesty has indeed committed an indiscretion."

「おや、それは!それはまずいですね。陛下はまことに軽率なことをなさいました」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • indiscretion(インディスクレッション)… 軽率な行い・無分別難
  • note-paper(ノートペイパー)… 便箋・手紙用の紙
  • committed(コミッティッド)… (過ちを)犯した(commit の過去分詞)・献身的な
  • imitated(イミテイティッド)… まねられた・模倣された(imitate の過去分詞)
  • private(プライヴェット)… 私用の・個人的な・内密の
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • stolen(ストウルン)… 盗まれた(steal の過去分詞)
  • indeed(インディード)… 本当に・そうかい

次の場面:若き日の過ち A Youthful Folly

二人で写った写真があると聞き、ホームズは国王の軽率さを指摘する。国王は、当時はまだ皇太子で若かったのだと弁解する。ホームズは写真を取り戻すしかないと言い、まずは買い取りを勧めるが、相手には売る気がないという。それならば盗み出すまでだと、ホームズはあっさり言ってのける。