Scene 24 · Notes

解説 場面 24「五度の失敗」

この場面の解説

国王はすでに五度も写真の奪還を試み、すべて失敗していた。ホームズはこれを面白い問題だと笑い、国王にとがめられて、彼女が写真で何をするつもりなのかを尋ねる。

表現・文法のポイント

Twice burglars in my pay ransacked her house.
in one's pay は「〜に雇われて、〜から金をもらって」。ransack は「(物を探して)家などをくまなく荒らす」。国王が人を雇って泥棒に入らせたことを、Twice と回数から切り出して淡々と語っている。
quite a pretty little problem
pretty はここで「かわいい」ではなく「なかなか見事な、面白い」の意味。quite a 〜 は「相当な〜」。難問を前にしたホームズの喜びが表れた言い方で、little を添えて、深刻な事態を軽く扱う響きもある。
returned the King reproachfully
return はここで「返す」ではなく「言い返す、答える」の意味で、said や replied の代わりに使われる文語的な用法だ。reproachfully は「とがめるように」で、笑うホームズへの不満が表れている。
what does she propose to do with the photograph
propose to 〜 は「提案する」ではなく「〜するつもりである」(intend to)の意味で、イギリス英語でよく使われる。ホームズは話を相手の目的へ向け、事件の核心に切り込んでいく。

背景・時代

ホームズの笑い
国王の深刻な悩みを前に、ホームズは難問であるほど喜ぶ。依頼人の苦境よりも謎そのものに心を惹かれる、ホームズらしい性格がよく表れた場面である。

全文の対訳

"Five attempts have been made. Twice burglars in my pay ransacked her house. Once we diverted her luggage when she travelled. Twice she has been waylaid. There has been no result."

「これまでに五回試みた。二度は、私が雇った押し込みに彼女の家を家探しさせた。一度は、旅の途中で彼女の荷物を別の所へ回させた。二度は、待ち伏せして襲わせた。だが、何の成果もなかった」

"No sign of it?"

「手がかりもなしですか」

"Absolutely none."

「まったくない」

Holmes laughed. "It is quite a pretty little problem," said he.

ホームズは笑った。「なかなか面白い、ちょっとした問題ですね」と彼は言った。

"But a very serious one to me," returned the King reproachfully.

「だが、私にとってはきわめて深刻な問題なのだ」と国王はとがめるように言い返した。

"Very, indeed. And what does she propose to do with the photograph?"

「まったくそのとおりです。それで、彼女はその写真をどうするつもりなのでしょう」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • ransacked(ランサックト)… くまなく荒らした・物色した(ransack の過去形)難
  • waylaid(ウェイレイド)… 待ち伏せされた(waylay の過去分詞)・呼び止められた難
  • reproachfully(リプロウチフリー)… とがめるように・非難するように難
  • attempts(アテンプツ)… 試み(複数)・企て
  • burglars(バーグラーズ)… 押し込み強盗・空き巣(複数)
  • diverted(ダイヴァーティッド)… (進路を)そらした・横取りした(divert の過去形)
  • luggage(ラギッジ)… 手荷物・旅行かばん
  • propose(プロポウズ)… (〜するつもりで)いる・提案する・結婚を申し込む

次の場面:鋼の心の女 A Soul of Steel

アイリーン・アドラーの狙いは国王を破滅させることだという。国王はスカンジナビア国王の王女との結婚を控えており、少しでも不行跡の疑いが立てば縁談は壊れてしまう。彼女は写真を王女の家へ送ると脅している。国王は、美貌と鋼の意志をあわせ持つ彼女なら必ず実行すると恐れている。