Scene 26 · Notes

解説 場面 26「猶予は三日」

この場面の解説

アドラーは婚約発表の日に写真を送るつもりで、発表は次の月曜日だ。ホームズは三日の猶予があると落ち着き払い、国王はランガム・ホテルで知らせを待つことになる。

表現・文法のポイント

the betrothal was publicly proclaimed
betrothal は「婚約」の古風で改まった語で、今なら engagement が普通だ。proclaim は「公に宣言する」。王族の婚約らしい、重々しい言葉選びになっている。
I shall drop you a line
drop someone a line は「ちょっと手紙(便り)を書く」という決まった言い方で、今でも使う。shall は一人称の未来を表す、イギリス英語の古めの用法だ。
I shall be all anxiety.
be all +名詞 は「~そのものだ、~でいっぱいだ」という強調。be all ears(耳をそばだてる)と同じ形で、「心配でたまらないだろう」と気持ちの強さを表している。

背景・時代

ランガム・ホテル
1865年にリージェント・ストリートの北端近くに開業した高級ホテルで、当時のロンドンを代表する大ホテルの一つだった。お忍びの国王が偽名で泊まる場所としてふさわしい格式である。

全文の対訳

"You are sure that she has not sent it yet?"

「まだ送っていないのは確かなのですね」

"I am sure."

「確かだ」

"And why?"

「なぜです?」

"Because she has said that she would send it on the day when the betrothal was publicly proclaimed. That will be next Monday."

「婚約が公に発表される日に送ると、あの女が言ったからだ。それは次の月曜日になる」

"Oh, then we have three days yet," said Holmes with a yawn. "That is very fortunate, as I have one or two matters of importance to look into just at present. Your Majesty will, of course, stay in London for the present?"

「おや、それならまだ三日ありますね」とホームズはあくびをしながら言った。「ちょうど今、調べなければならない大事な件を一つ二つ抱えているので、それは好都合です。陛下は、もちろん、当分ロンドンにご滞在でしょうね」

"Certainly. You will find me at the Langham under the name of the Count Von Kramm."

「もちろんだ。ランガム・ホテルにフォン・クラム伯爵の名で泊まっている」

"Then I shall drop you a line to let you know how we progress."

「では、進み具合をお知らせする手紙を差し上げましょう」

"Pray do so. I shall be all anxiety."

「ぜひそうしてもらいたい。気がかりでならないのだ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • betrothal(ビトロウザル)… 婚約難
  • proclaimed(プロクレイムド)… 宣言された・布告された(proclaim の過去分詞)
  • importance(インポータンス)… 重要性・重大さ
  • fortunate(フォーチュネット)… 幸運な・好都合な
  • publicly(パブリクリー)… 公に・公式に
  • progress(プログレス)… 進展する・進む・進歩
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • anxiety(アングザイエティ)… 心配・不安(all anxiety=心配でたまらない)

次の場面:白紙委任 Carte Blanche

話は費用のことに移る。国王は、あの写真のためなら王国の州を一つ差し出してもよいと言い、金の使い方をすべてホームズに任せる。そしてマントの下から重い革袋を取り出し、金貨と紙幣で合わせて千ポンドをテーブルに置く。ホームズは手帳の一枚に受取書を書きつけ、国王に手渡す。