Scene 41 · Notes

解説 場面 41「発煙筒」

この場面の解説

ホームズはワトソンに、合図で物を部屋へ投げ込み「火事だ」と叫ぶよう指示する。手渡されたのは、葉巻の形をした配管工用の発煙筒だった。

表現・文法のポイント

You are to watch me
be to + 動詞の原形は「〜することになっている/〜しなさい」という予定・指示を表す。命令文より改まった言い方で、段取りを一つずつ言い渡すホームズの口調によく合う。
raise the cry of fire
raise a cry で「叫び声をあげる」。the cry of fire は「火事だ!」という叫びそのものを指す。英語では実際に "Fire!" と叫ぶのが火事を知らせる決まり文句で、それを名詞句で表している。
You quite follow me?
follow は「(話に)ついてくる=理解する」。quite を添えて「すっかりわかったかね」と念を押している。疑問文の語順にせず平叙文の語尾を上げるだけで、確認の問いになる口語的な形だ。
fitted with a cap at either end
be fitted with は「〜が取り付けてある」。at either end は「両端に」で、either が「どちらの端にも」の意味になる点に注意。cap はここでは帽子でなく、点火用の雷管のことだ。

背景・時代

配管工用の発煙筒
当時の配管工は、排水管や煙突に煙を流し込み、どこから漏れるかを調べることがあった。そのための煙を出す道具がsmoke-rocketで、危険な爆発物ではない。ホームズが手近な仕事道具を作戦に転用しているのが面白い。

全文の対訳

"Yes."

「わかった」

"You are to watch me, for I will be visible to you."

「私を見ていてくれ、きみからは私の姿が見えるはずだ」

"Yes."

「うん」

"And when I raise my hand—so—you will throw into the room what I give you to throw, and will, at the same time, raise the cry of fire. You quite follow me?"

「そして私が手を挙げたら――こんなふうにね――渡しておく物を部屋の中へ投げ込み、それと同時に『火事だ』と叫んでくれ。わかったかね?」

"Entirely."

「すっかりわかったよ」

"It is nothing very formidable," he said, taking a long cigar-shaped roll from his pocket. "It is an ordinary plumber's smoke-rocket, fitted with a cap at either end to make it self-lighting. Your task is confined to that. When you raise your cry of fire, it will be taken up by quite a number of people. You may then walk to the end of the street, and I will rejoin you in ten minutes. I hope that I have made myself clear?"

「何も物騒な物じゃない」と彼は言い、ポケットから葉巻の形をした細長い筒を取り出した。「ごく普通の配管工用の発煙筒で、ひとりでに火がつくよう両端に雷管がつけてある。きみの役目はそれだけだ。きみが『火事だ』と叫べば、かなり大勢の人がそれに続いて叫ぶだろう。そうしたら通りの端まで歩いていってくれ、十分後に私がそこで落ち合う。これで、わかってもらえたと思うが?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • formidable(フォーミダブル)… 恐ろしい・手ごわい難
  • smoke-rocket(スモークロケット)… 発煙筒(配管の漏れを調べる煙の出る筒)難
  • self-lighting(セルフライティング)… 自然に火がつく・自動点火の難
  • cigar-shaped(シガーシェイプト)… 葉巻の形をした
  • plumber's(プラマーズ)… 配管工の・配管工用の
  • entirely(エンタイアリー)… すっかり・完全に
  • ordinary(オーディナリー)… 普通の・ありふれた
  • confined(コンファインド)… 限られた・閉じ込められた

次の場面:牧師への変装 The Clergyman

ワトソンは自分の役目を一つずつ復唱し、すっかり任せてくれと請け合う。ホームズは新しい役の支度をすると言って寝室に消え、数分後、人のよい素朴な牧師になりきって現れる。変わったのは衣装だけではない。表情も物腰も別人のようで、ワトソンはその見事さに舌を巻く。