Scene 52 · Notes

解説 場面 52「赤い絵の具」

この場面の解説

ホームズの種明かしが続く。騒ぎの最中に赤い絵の具で顔を汚してけが人を装い、狙いの居間へ運び込まれたのだという。

表現・文法のポイント

when the row broke out
row はここでは「列」ではなく「騒ぎ・けんか」で、発音は「ラウ」になる。break out は戦争・火事・騒動などが「急に起こる」こと。主にイギリス英語の口語だ。
a little moist red paint in the palm of my hand
moist は「湿った」で、まだ乾いていない絵の具のこと。palm は「手のひら」。顔に手を当てたときに血のように見せるための小道具で、ホームズの周到さが分かる。
That also I could fathom
目的語 That を文頭に出した倒置で、「それくらいは私にも分かった」と強調している。fathom は本来「水深を測る」で、そこから「(物事の奥まで)推し量る・理解する」という意味になった。

全文の対訳

"Then, when the row broke out, I had a little moist red paint in the palm of my hand. I rushed forward, fell down, clapped my hand to my face, and became a piteous spectacle. It is an old trick."

「それから、騒ぎが始まったとき、私は手のひらに湿った赤い絵の具を少し仕込んでおいた。前へ飛び出し、倒れ、手で顔を押さえて、見るも哀れな姿になったわけだ。古い手だよ」

"That also I could fathom."

「そこまでは私にも察しがついたよ」

"Then they carried me in. She was bound to have me in. What else could she do? And into her sitting-room, which was the very room which I suspected. It lay between that and her bedroom, and I was determined to see which. They laid me on a couch, I motioned for air, they were compelled to open the window, and you had your chance."

「それから私は運び込まれた。彼女は私を中に入れるしかなかった。ほかにどうしようがあるかね。しかも運ばれた先は彼女の居間で、まさに私が目をつけていた部屋だった。ありかは居間か寝室のどちらかで、私はそれを確かめるつもりだった。皆は私をソファに寝かせ、私は空気が欲しいという仕草をし、皆は窓を開けざるを得なくなり、そこできみの出番が来たというわけさ」

"How did that help you?"

「それがどう役に立ったんだい」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • piteous(ピティアス)… 哀れな・痛ましい難
  • fathom(ファゾム)… 見抜く・理解する・(名詞で)尋(水深の単位)難
  • determined(ディターミンド)… 決心している・断固とした
  • spectacle(スペクタクル)… 光景・見もの・壮観
  • suspected(サスペクティッド)… 見当をつけた・疑った(suspect の過去形)
  • compelled(カンペルド)… (〜せざるを得ない状態に)させられた・強いられた
  • motioned(モウションド)… 身振りで示した・合図した(motion の過去形)
  • clapped(クラップト)… (手を)ぱっと当てた・拍手した(clap の過去形)

次の場面:火事の効用 The Use of Fire

火事の騒ぎが何の役に立ったのかと問うワトソンに、ホームズは種を明かす。家が火事だと思った女性は、とっさに最も大切な物へ駆け寄るものだ。狙いどおり彼女は隠し場所へ走り、ホームズはその場所を見届けた。だが御者に見張られていたため、その場で写真を取るのは控えたのだという。