Scene 63 · Notes

解説 場面 63「望みの報酬」

この場面の解説

写真はもう安全だと喜ぶ国王は、ホームズに報いようとエメラルドの指輪を差し出す。だがホームズはそれより大切なものがあると言い、アイリーンの写真を望んで国王を驚かせる。

表現・文法のポイント

I am immensely indebted to you.
be indebted to 人 は「人に恩がある、借りがある」。debt(借金)と同じ語源である。immensely は「とてつもなく」で、国王の感謝の大きさを強めている。
Pray tell me in what way I can reward you.
Pray は「どうか」と頼む古風な言い方で、Please に近い。in what way は「どのような方法で」という間接疑問で、tell me の目的語になっている。王が礼の仕方を相手に委ねる、改まった申し出である。
something which I should value even more highly
I should … は古いイギリス英語で I would … に当たり、「(いただけるなら)…でしょう」という控えめな言い方。even+比較級で「さらに一層」。value highly は「高く評価する、大切にする」。
You have but to name it.
have but to do は have only to do と同じで「…しさえすればよい」。but が only の意味になる古風な用法である。「名を言えば何でも与えよう」という王らしい気前のよさが表れる。

背景・時代

報酬に写真を選ぶ
アイリーンが残したのは、イブニングドレス姿の彼女自身の写真だった。高価な指輪ではなくそれを望んだところに、自分を出し抜いた相手へのホームズの敬意が表れている。

全文の対訳

"I am immensely indebted to you. Pray tell me in what way I can reward you. This ring—" He slipped an emerald snake ring from his finger and held it out upon the palm of his hand.

「きみには大いに恩を受けた。どのように報いればよいか、ぜひ聞かせてもらいたい。この指輪を――」国王はエメラルドをはめ込んだ蛇の指輪を指から抜き、手のひらにのせて差し出した。

"Your Majesty has something which I should value even more highly," said Holmes.

「陛下は、私がそれよりもずっと大切に思うものをお持ちです」とホームズは言った。

"You have but to name it."

「名を挙げてくれさえすればよい」

"This photograph!"

「この写真です!」

The King stared at him in amazement.

国王は驚いてホームズを見つめた。

"Irene's photograph!" he cried. "Certainly, if you wish it."

「アイリーンの写真を!」と国王は叫んだ。「もちろんだ、きみが望むのなら」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • indebted(インデッティッド)… 恩を受けて・借りがある難
  • immensely(イメンスリー)… 大いに・非常に
  • amazement(アメイズメント)… 驚き・びっくり
  • slipped(スリップト)… するりと抜いた・滑った
  • emerald(エメラルド)… エメラルド(の)
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • reward(リウォード)… 報いる・報酬を与える・報酬
  • highly(ハイリー)… 高く・大いに

次の場面:女性の機知 A Woman's Wit

写真を受け取ったホームズは、国王に礼を述べて依頼の終わりを告げる。そして差し出された国王の手には目もくれず、ワトソンを伴ってベイカー街へ引き揚げる。ボヘミア王国を揺るがしかけた醜聞は、こうして一人の女性の機知によって幕を下ろす。この一件以来、ホームズが彼女を語るときの呼び名は決まっている。