Scene 29 · Notes

解説 場面 29「机上の手紙」

この場面の解説

ホームズは手紙に大きな手掛かりはないと言うが、署名までタイプで打たれている点を重視する。理由を問われたワトソンは、婚約不履行で訴えられた場合に署名を否認するためかと考える。

表現・文法のポイント

Not only that, but the signature is typewritten.
not only A but Bは「AだけでなくBも」。thatはワトソンが述べた、手紙がタイプで打たれていることを受ける。ホームズは文章だけでなく署名の打ち方にも注意を向け、その点を分けて考えるよう友人に促している。
an action for breach of promise
actionはここで行動ではなく訴訟、breachは約束や契約の不履行を表す。この文脈のpromiseは結婚の約束である。ワトソンは、将来その不履行を理由に訴えられた場合を想像し、署名の打ち方の理由を推測している。

全文の対訳

"That will do," said Holmes. "As to the letters," he continued, glancing over them, "they are very commonplace. Absolutely no clue in them to Mr. Angel, save that he quotes Balzac once. There is one remarkable point, however, which will no doubt strike you."

「そこまででいい」とホームズは言った。「手紙のほうだが」と、目を通しながら彼は続けた。「ごくありふれたものだ。一度バルザックを引用している以外、エンジェルさんについての手掛かりはまったくない。ただ、一つ注目すべき点があって、きみもきっと気づくだろう」

"They are typewritten," I remarked.

「タイプで打ってあるね」と私は言った。

"Not only that, but the signature is typewritten. Look at the neat little 'Hosmer Angel' at the bottom. There is a date, you see, but no superscription except Leadenhall Street, which is rather vague. The point about the signature is very suggestive—in fact, we may call it conclusive."

「それだけでなく、署名もタイプなのだ。一番下の、こぢんまりと整った『ホズマー・エンジェル』を見たまえ。日付はあるが、差出人の住所はレドンホール街とあるだけで、かなり曖昧だ。署名の点はたいへん示唆的だ。実際、決定的と言ってもよい」

"Of what?"

「何についてだい」

"My dear fellow, is it possible you do not see how strongly it bears upon the case?"

「きみ、これが事件にどれほど強く関係するか、分からないというのかね」

"I cannot say that I do unless it were that he wished to be able to deny his signature if an action for breach of promise were instituted."

「分かるとは言えないよ。婚約不履行で訴えられたときに、自分の署名ではないと言えるようにしたかった、ということでもない限りね」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • commonplace(コモンプレイス)… ありふれた・平凡な難
  • typewritten(タイプリトゥン)… タイプで打たれた難
  • superscription(スーパースクリプション)… 手紙の上部の差出人住所・上書き難
  • instituted(インスティテューティッド)… (訴訟が)起こされた・提起された・(制度・会などを)設けた・始めた(institute の過去形)難
  • remarkable(リマーカブル)… 注目すべき・著しい
  • suggestive(サジェスティヴ)… (of で)〜を思わせる・示唆的な
  • conclusive(コンクルースィヴ)… 決定的な・結論を確定する
  • signature(スィグナチャー)… 署名・サイン

次の場面:返事を待つまで Until the Replies Arrive

ホームズが手紙のどこに目をつけたのか、ワトソンにはまだ分からない。ホームズは、これで片がつくはずだと言って、二通の手紙を書くことにする。一通はシティの商会へ、もう一通は依頼人の継父へ。返事が来るまでは何もできない。ワトソンは、友人はもう手がかりをつかんでいるのだろうと考える。