Scene 32 · Notes

解説 場面 32「戸口の気配」

この場面の解説

ホームズは事件に初めから謎はなかったと言い、悪党を処罰できる法律がないことを難点に挙げる。ワトソンが人物と目的を尋ねると、約束していた継父が到着する。

表現・文法のポイント

can touch the scoundrel
touchはここでは物に触れることではなく、法律が人を取り締まり、処罰することを指す。誰なのかというワトソンの問いに先立ち、ホームズが解決後に残る難点を述べている。
hardly out of my mouth
問いが「ほとんど口を出ないうちに」という言い方。後ろのwhenで足音と戸をたたく音が続き、質問を言い終えたばかりの瞬間に来客の気配がしたという、出来事の近さを表す。

全文の対訳

"No, no, the mystery!" I cried.

「いや、いや、あの謎だよ」と私は声を上げた。

"Oh, that! I thought of the salt that I have been working upon. There was never any mystery in the matter, though, as I said yesterday, some of the details are of interest. The only drawback is that there is no law, I fear, that can touch the scoundrel."

「ああ、あれか。いま取り組んでいる塩のことかと思ったのだ。あの件に謎など、初めからなかったよ。もっとも、昨日言ったように、細部には面白いところがある。唯一の難点は、残念ながら、あの悪党を取り締まれる法律がないことだ」

"Who was he, then, and what was his object in deserting Miss Sutherland?"

「では、あの男は誰で、サザーランド嬢を置き去りにした目的は何だったのかい」

The question was hardly out of my mouth, and Holmes had not yet opened his lips to reply, when we heard a heavy footfall in the passage and a tap at the door.

私の口から問いが出たばかりで、ホームズが答えようと口を開く間もなく、廊下に重い足音がして、戸をたたく音が聞こえた。

"This is the girl's stepfather, Mr. James Windibank," said Holmes. "He has written to me to say that he would be here at six. Come in!"

「あの娘さんの継父、ジェームズ・ウィンディバンクさんだ」とホームズは言った。「六時にここへ来ると、手紙をよこしている。どうぞ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • scoundrel(スカウンドレル)… 悪党・ならず者・卑劣な男難
  • stepfather(ステップファーザー)… 継父・義父
  • deserting(ディザーティング)… 見捨てること・置き去りにすること
  • drawback(ドローバック)… 難点・欠点
  • footfall(フットフォール)… 足音
  • mystery(ミステリー)… 謎・不可解なこと・推理小説
  • details(ディテイルズ)… 細かい点・詳細(複数)
  • passage(パスィッジ)… 廊下・通路・(文章の)一節

次の場面:約束の来客 The Expected Caller

六時の約束に少し遅れて現れたのは、依頼人の継父ジェームズ・ウィンディバンクだ。三十歳ほどのがっしりした男で、物腰はやわらかい。ホームズに迎えられた彼は、遅れを詫びたあと、メアリーが家の内輪の話を外へ持ち出したことをしきりにこぼす。こんな相談は金の無駄だ、とも言う。