第 4 章(IV)継父の来訪A Case of Identity

翌日の夕方、ワトソンがベイカー街へ駆けつけると、ホームズは化学実験に一日を費やしていた。そこへ、ホームズが手紙で呼んだ依頼人の継父、ジェームズ・ウィンディバンクがやってくる。家の内輪の話を外へ持ち出されたことに不満げな来客を前に、ホームズは何を語るのか。

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  1. 31翌夕の訪問 The Following Evening翌日、ワトソンは重い病人の看病で一日じゅう手が離せない。六時近くになってようやく体が空き、ハンサムでベイカー街へ急ぐ。謎が解ける場に間に合わないのではと気をもんで駆けつけると、ホームズは肘掛け椅子で丸くなっていた。部屋には化学実験の瓶と試験管が並んでいる。
  2. 32戸口の気配 A Sound at the Doorワトソンが尋ねたかったのは、実験のことではなく、事件のほうだ。言い直すワトソンに、ホームズは今度は何と答えるのか。ワトソンがさらに、あの男は誰なのかと問いを重ねようとしたとき、廊下に重い足音が近づいてくる。
  3. 33約束の来客 The Expected Caller六時の約束に少し遅れて現れたのは、依頼人の継父ジェームズ・ウィンディバンクだ。三十歳ほどのがっしりした男で、物腰はやわらかい。ホームズに迎えられた彼は、遅れを詫びたあと、メアリーが家の内輪の話を外へ持ち出したことをしきりにこぼす。こんな相談は金の無駄だ、とも言う。
  4. 34機械の癖 A Machine's Habits探しても見つかるものではない、とウィンディバンクは言い切る。ホームズは静かに、見つけられると考えていると答える。そして、タイプライターにも人の筆跡と同じように癖がある、という話を始める。使い込んだ機械ほど、文字のすり減り方に違いが出るのだという。
  5. 35小論の構想 An Idea for a Monographホームズは、タイプライターと犯罪について小論を書こうかと考えている、と話を続ける。この題には、前から少しばかり関心を寄せてきたという。来客は、そんな話につきあう暇はないとばかりに、落ち着かない様子で席を立とうとする。
  6. 36居間での応酬 An Exchange in the Room夕暮れの居間で、ホームズは来客を椅子に座らせる。そして暖炉の角へ足を載せ、ポケットに両手を入れて背にもたれると、ワトソンたちにというより、自分自身に語りかけるような調子で、これまでの成り行きを順を追って話しだす。違っていたら言ってほしい、とホームズは添える。
  7. 37経緯をたどる Tracing the Eventsホームズは、事の成り行きを最初から順にたどりはじめる。語られるのは、ある家庭の暮らしと、そこで育った娘のこと。話はやがて、娘が舞踏会へ行くと言い張った日へとさかのぼっていく。ホームズは淡々と、一つひとつの出来事をつないでいく。
  8. 38説明の続き The Account Continuesホームズの話は、舞踏会のあとの日々へと進む。娘はエンジェルにすっかり心を奪われ、母も彼をほめそやした。散歩、婚約、そして新約聖書に手を置かせた誓い。婚礼の朝にエンジェルが口にした妙な言葉には、どんな意味があったのか。ホームズは一つずつ説き明かしていく。
  9. 39椅子を立って Rising from the Chairホームズが話す間に、来客は落ち着きを取り戻していた。青白い顔に冷たい笑いを浮かべて椅子から立ち、法を破っているのはむしろそちらだ、と言い返す。扉に鍵をかけたままでは、人を不法に閉じ込めたことになるというのだ。ホームズは鍵を開け、扉を大きく開け放つ。
  10. 40友人への問い A Question for Holmesホームズは笑いながら、肘掛け椅子に身を投げ出す。この事件にも、いくらかおもしろい所はあったと言う。だがワトソンには、友人の推理の筋道がまだすべては見えていない。ホームズは、はじめから気になっていた点を一つずつ挙げていく。
  11. 41確かめたこと What Was Checkedホームズはどうやって考えを確かめたのか、とワトソンは尋ねる。ホームズは、手元の資料と問い合わせの手紙をどう使ったかを話す。最後にワトソンは、依頼人のメアリーのことを気にかける。この件を、ホームズは彼女にどう伝えるつもりなのだろうか。