Scene 33 · Notes

解説 場面 33「約束の来客」

この場面の解説

ウィンディバンクは六時の面会を約束した手紙が自分のものだと認める。娘が家の問題を持ち出したことに不満を示し、エンジェルを見つけるのは不可能で無駄な出費だと言う。

表現・文法のポイント

not quite my own master
my own masterは、自分の意思で自由に行動できる身という意味。ここでは少し遅れたことへの弁解として、時間をすべて自分で決められる立場ではない、とウィンディバンクが述べている。
wash linen of the sort in public
洗濯物を人前で洗うという字面を使い、家の内情や恥を外へさらすことを表す。of the sortは「この種の」を添え、娘がホームズを訪ねたことを、継父がどう捉えているか示している。

全文の対訳

The man who entered was a sturdy, middle-sized fellow, some thirty years of age, clean-shaven, and sallow-skinned, with a bland, insinuating manner, and a pair of wonderfully sharp and penetrating grey eyes. He shot a questioning glance at each of us, placed his shiny top-hat upon the sideboard, and with a slight bow sidled down into the nearest chair.

入ってきた男は三十歳ほどの、がっしりした中背の人物だった。ひげをきれいに剃り、黄ばんだ肌で、愛想よく取り入るような物腰をしていたが、灰色の両目は驚くほど鋭く、人を見透かすようだった。彼は私たち一人一人に探るような視線を投げ、ぴかぴかのシルクハットをサイドボードに置くと、軽く会釈をして、いちばん近い椅子へそっと身を滑らせた。

"Good-evening, Mr. James Windibank," said Holmes. "I think that this typewritten letter is from you, in which you made an appointment with me for six o'clock?"

「こんばんは、ジェームズ・ウィンディバンクさん」とホームズは言った。「この、六時にお会いする約束をしたタイプの手紙は、あなたからのものですね」

"Yes, sir. I am afraid that I am a little late, but I am not quite my own master, you know. I am sorry that Miss Sutherland has troubled you about this little matter, for I think it is far better not to wash linen of the sort in public. It was quite against my wishes that she came, but she is a very excitable, impulsive girl, as you may have noticed, and she is not easily controlled when she has made up her mind on a point. Of course, I did not mind you so much, as you are not connected with the official police, but it is not pleasant to have a family misfortune like this noised abroad. Besides, it is a useless expense, for how could you possibly find this Hosmer Angel?"

「ええ、そうです。少し遅れてしまったようですが、なにしろ、すっかり自分の自由になる身ではありませんので。サザーランドさんがこんな些細なことでご面倒をおかけし、申し訳ありません。この種の内輪の恥を世間にさらさないほうが、ずっとよいと思うのです。あの子がこちらへ来たのは、まったく私の意に反することでした。でも、お気づきかもしれませんが、たいへん興奮しやすく衝動的な娘で、一つのことを決心すると、簡単には言うことを聞かないのです。もちろん、あなたは警察の方ではありませんから、それほど気にはしませんでしたが、こうした家の不幸を世間に広められるのは、愉快ではありません。それに、無駄な出費でしょう。どうしてあなたに、そのホズマー・エンジェルを見つけられるというのですか」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • clean-shaven(クリーンシェイヴン)… ひげをきれいに剃った難
  • insinuating(インスィニュエイティング)… 取り入るような・巧みに気を引く難
  • sideboard(サイドボード)… サイドボード(料理や食器を置く低い飾り棚)難
  • typewritten(タイプリトゥン)… タイプで打たれた難
  • misfortune(ミスフォーチュン)… 不幸・災難難
  • sallow-skinned(サロウスキンド)… 肌が黄ばんだ・血色の悪い
  • middle-sized(ミドルサイズド)… 中くらいの大きさ・中背の
  • wonderfully(ワンダフリー)… すばらしく

次の場面:機械の癖 A Machine's Habits

探しても見つかるものではない、とウィンディバンクは言い切る。ホームズは静かに、見つけられると考えていると答える。そして、タイプライターにも人の筆跡と同じように癖がある、という話を始める。使い込んだ機械ほど、文字のすり減り方に違いが出るのだという。