Scene 08 · Notes

解説 場面 8「小門の向こう」

この場面の解説

ワトソンは小門から続く道を見て、老人が何かにおびえて逃げたというホームズの考えを思い描く。犬なのか、人間の関与なのか、まだ分からず、バリモアへの疑いもよぎる。

表現・文法のポイント

lost his wits
恐怖などのために「正気を失った」。知識を忘れたという説明ではなく、老人が理性的に考えられず逃げたというワトソンの想像に当たる。
a human agency
「人間による働き、関与」。人材を扱う会社ではない。超自然の犬だけでなく、人が事件へ関わった可能性を問う言葉。

全文の対訳

I remembered your theory of the affair and tried to picture all that had occurred. As the old man stood there he saw something coming across the moor, something which terrified him so that he lost his wits and ran and ran until he died of sheer horror and exhaustion. There was the long, gloomy tunnel down which he fled. And from what? A sheep-dog of the moor? Or a spectral hound, black, silent, and monstrous? Was there a human agency in the matter? Did the pale, watchful Barrymore know more than he cared to say? It was all dim and vague, but always there is the dark shadow of crime behind it.

私はこの事件についてのきみの考えを思い出し、起きたことをすべて思い描こうとした。老人はそこに立っていたとき、荒れ地を横切って何かが来るのを見た。それにひどくおびえて正気を失い、ただ走り続け、恐怖と疲労のあまり死んでしまったのだ。そこには、彼が逃げていった、長く薄暗いトンネルのような道があった。それにしても、何から逃げたのか。荒れ地の牧羊犬からだろうか。それとも、黒く、音も立てず、巨大な、幽霊の猟犬からだろうか。この件には、人間の働きがあったのか。あの青白く油断のないバリモアは、口にする気がある以上のことを知っていたのか。何もかもぼんやりとして曖昧だったが、その背後には、いつも犯罪の暗い影がある。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • exhaustion(イグゾースチャン)… 衰弱・極度の疲労
  • terrified(テリファイド)… ひどく怯えた
  • sheep-dog(シープドッグ)… 牧羊犬
  • monstrous(モンストラス)… 巨大で恐ろしい・怪物のような
  • occurred(オカード)… 起こった・(occurred toで)思いついた・生じた・思い浮かんだ
  • spectral(スペクトラル)… 幽霊のような
  • watchful(ウォッチフル)… 油断のない・注意深い
  • theory(スィアリー)… 説・理論・推論

次の場面:もう一人の隣人 Another Neighbour

ワトソンの報告には、これまで手紙で紹介していなかった隣人も加わる。ラフター館に暮らす老人との出会いを、彼は現地の暮らしの一部として記そうとしている。館から遠くない土地にも、ワトソンがまだ会ったことのない人々が、それぞれの家で暮らしている。