Scene 12 · Notes

解説 場面 12「執事の気がかり」

この場面の解説

執事は朝の質問で信頼を失ったのかと心配し、主人は服を与えてなだめる。ワトソンは妻の涙と夫の性格を考え、昨夜の出来事で疑いが強まったと述べる。

表現・文法のポイント

of his own accord
「自分から、自発的に」。夕方の話題は、再び質問されて答えたのではなく、気にしていたバリモア自身が持ち出している。
brings all my suspicions to a head
疑念を一気に強め、はっきりした段階へ押し進めること。何があったかは、これからワトソンが述べる昨夜の出来事として示される。

全文の対訳

In the evening he recurred to the subject of his own accord.

夕方になると、彼は自分からその話を蒸し返した。

"I could not quite understand the object of your questions this morning, Sir Henry," said he. "I trust that they do not mean that I have done anything to forfeit your confidence?"

「今朝のお尋ねの意図が、よく分からなかったのですが、ヘンリー卿」と彼は言った。「ご信頼を失うようなことを私がしたという意味では、ございませんね」

Sir Henry had to assure him that it was not so and pacify him by giving him a considerable part of his old wardrobe, the London outfit having now all arrived.

ヘンリー卿はそうではないと言って安心させ、ロンドンであつらえた衣服がすべて届いたところだったので、自分の古い服のかなりの分を与えて、なだめなければならなかった。

Mrs. Barrymore is of interest to me. She is a heavy, solid person, very limited, intensely respectable, and inclined to be puritanical. You could hardly conceive a less emotional subject. Yet I have told you how, on the first night here, I heard her sobbing bitterly, and since then I have more than once observed traces of tears upon her face. Some deep sorrow gnaws ever at her heart. Sometimes I wonder if she has a guilty memory which haunts her, and sometimes I suspect Barrymore of being a domestic tyrant. I have always felt that there was something singular and questionable in this man's character, but the adventure of last night brings all my suspicions to a head.

私にはバリモア夫人も気にかかる。大柄でがっしりした、考えの幅は狭いが、たいそうきちんとしていて、清教徒的な厳格さへ傾きやすい人だ。これほど感情に乏しい人も、ちょっと想像できないだろう。それでも、ここへ来た最初の夜に彼女が激しくすすり泣くのを聞いたことは話したし、その後も、一度ならず顔に涙の跡を認めている。何か深い悲しみが、絶えず彼女の心をむしばんでいるのだ。ときには、後ろめたい記憶につきまとわれているのだろうかと思い、またときには、バリモアが家庭では暴君なのではないかと疑う。この男の性格には、どこか普通と違う、疑わしいところがあると前から感じていたが、昨夜の出来事で、私の疑念は一気に強まった。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • forfeit(フォーフィット)… (違反の罰として)失う・没収される難
  • puritanical(ピュアリタニカル)… 清教徒的に厳格な難
  • conceive(コンスィーヴ)… 想像する・思いつく難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な
  • questionable(クウェスチョナブル)… 疑わしい
  • respectable(リスペクタブル)… 立派な・きちんとした・まともな
  • confidence(コンフィデンス)… 信頼・自信・(take 〜 into one's confidence で)〜に秘密を打ち明ける
  • suspicions(サスピションズ)… 疑い・疑念

次の場面:夜の足音 Footsteps at Night

館で眠りの浅い夜を過ごすワトソンは、昨夜の小さな出来事を報告しようとしている。静まり返った建物の中では、廊下の音も耳に残る。新しい土地での生活にはまだ慣れ切れず、夜の静けさの中でも、ワトソンの神経は休まりにくい。