Scene 02 · Notes

解説 場面 2「奇妙な事件好き」

この場面の解説

ホームズはワトソンに長椅子をすすめ、きみも奇妙なことを好むからこそ私の冒険を記録し、脚色までしてきたのだと言う。さらに、現実の人生はどんな想像よりはるかに大胆だという持論を持ち出すが、ワトソンはその説を疑ったことがあった。

表現・文法のポイント

as was his custom when in judicial moods
as was his custom は「彼の習慣どおりに」。as は前の内容全体を受ける関係詞的な用法だ。when in ~ は when he was in ~ から主語と be 動詞を省いた形。judicial は「裁判の」から転じて「冷静に裁くような」で、事件を吟味する構えを表す。
if you will excuse my saying so
「こう言ってはなんだが」と前置きする丁寧な挿入句。この will は未来ではなく「~してくれる気がある」という意志を表す。my saying は動名詞の意味上の主語を所有格で示した形。ワトソンの「脚色」を軽くからかっている。
far more daring than any effort of the imagination
far は比較級を強めて「はるかに」。比較級+than any ~ で「どんな~よりも」と最上級に近い意味になる。daring は「大胆な」。「事実は小説よりも奇なり」に通じる、ホームズの持論だ。
A proposition which I took the liberty of doubting
take the liberty of ~ing は「勝手ながら~する、失礼を承知で~する」。主節のない名詞句だけの返事で、「それは私があえて疑ってみせた説だったね」と、ワトソンが軽く言い返している。

背景・時代

メアリー・サザーランド嬢(Miss Mary Sutherland)
短編『花婿失踪事件』(A Case of Identity)の依頼人。雑誌に載った順では『赤毛組合』の次の作品だが、作中の時間ではこの事件より少し前に起きたことになっている。ホームズにとっては「ごく単純な問題」だった。

全文の対訳

"Try the settee," said Holmes, relapsing into his armchair and putting his fingertips together, as was his custom when in judicial moods. "I know, my dear Watson, that you share my love of all that is bizarre and outside the conventions and humdrum routine of everyday life. You have shown your relish for it by the enthusiasm which has prompted you to chronicle, and, if you will excuse my saying so, somewhat to embellish so many of my own little adventures."

「長椅子にかけたまえ」とホームズは言うと、肘掛け椅子にまた深く身を沈め、物事を吟味するときのいつもの癖で、両手の指先を突き合わせた。「ワトソン、きみも私と同じで、奇妙なもの、世のしきたりや退屈な日々の決まりごとからはみ出したものなら何でも好きなのは知っているよ。その好みは、私のささやかな冒険を数多く記録し、こう言っては何だが、いくらか脚色までしてくれたきみの熱心さに表れている」

"Your cases have indeed been of the greatest interest to me," I observed.

「きみの事件は、たしかに私にはこの上なく興味深かったからね」と私は言った。

"You will remember that I remarked the other day, just before we went into the very simple problem presented by Miss Mary Sutherland, that for strange effects and extraordinary combinations we must go to life itself, which is always far more daring than any effort of the imagination."

「覚えているだろうが、先日メアリー・サザーランド嬢が持ち込んだごく単純な問題に取りかかる直前に、私は言ったね。奇妙な効果や並外れた組み合わせを求めるなら人生そのものに当たるべきで、人生はいつだって、どんな想像力の働きよりもはるかに大胆なのだ、と」

"A proposition which I took the liberty of doubting."

「その説には、失礼ながら疑問を呈させてもらったね」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • settee(セティー)… 長椅子・ソファー難
  • relapsing(リラプスィング)… (元の状態に)戻ること・身を沈めること・(病気が)ぶり返すこと(relapse の ing 形)難
  • judicial(ジューディシャル)… (裁判官のように)冷静に判断する・司法の・裁判の難
  • humdrum(ハムドラム)… 退屈な・単調な・平凡な難
  • relish(レリッシュ)… 好み・楽しみ・(料理の)薬味難
  • embellish(エンベリッシュ)… (話を)脚色する・飾る難
  • proposition(プロポズィション)… 説・主張・提案難
  • extraordinary(イクストローディナリー)… 並外れた

次の場面:話をもう一度 Begin Again, Please

人生は想像より大胆だという説を、ワトソンは疑っていた。ホームズは、いずれ事実の山で納得させてみせると言い、ウィルソン氏の話こそ近ごろまれに見る奇妙なものだと告げる。犯罪かどうかもまだ分からない。ワトソンのため、そして細部をすべて聞くため、ホームズはウィルソン氏に話を初めからやり直してほしいと頼む。