Scene 06 · Notes

解説 場面 6「推理の種明かし」

この場面の解説

ホームズは推理の種を明かす。右手が左手より大きいのは力仕事をしてきたため、フリーメイソンであることは結社の印の胸ピンから、書き物をしていることは、てかてかの右の袖口と左ひじの擦れから分かったのだという。

表現・文法のポイント

quite a size larger than your left
「優にひと回り大きい」。a size は比較級の前に置いて差の大きさを表し、quite が「たっぷり」と強めている。larger than your left の left の後ろには hand が省略されている。
I won't insult your intelligence
insult one's intelligence は「(分かりきったことを説明して)相手の知性をばかにする」という決まった言い方。「言うまでもないでしょう」を丁寧に、少し皮肉を込めて言った表現で、現代英語でもよく使われる。
rather against the strict rules of your order
rather は「やや、いささか」。order はここでは「命令」でも「順序」でもなく「結社、団体」の意味で、騎士団や修道会にも使う。会員の印を人目につくように身につけるのは本来好ましくなかった、という含みがある。
What else can be indicated by
「ほかに何が示されうるだろうか」という修辞疑問で、「書き物以外には考えられない」という意味になる。答えをはっきり言わず、相手に考えさせる形にするのが、ホームズの得意な話し方だ。

背景・時代

インチ(inch)
長さの単位で、1インチは約2.54センチ。five inches は約13センチになる。袖口がそれだけ広くてかてかに光っているのは、机の上で長い時間、腕を動かして書き物をしてきた証拠だ。

全文の対訳

"Your hands, my dear sir. Your right hand is quite a size larger than your left. You have worked with it, and the muscles are more developed."

「あなたの手を見れば分かるよ。右手が左手より優にひと回り大きいだろう。右手を使って働いてきたから、筋肉がよく発達しているのだ」

"Well, the snuff, then, and the Freemasonry?"

「では、嗅ぎたばこと、フリーメイソンのほうは?」

"I won't insult your intelligence by telling you how I read that, especially as, rather against the strict rules of your order, you use an arc-and-compass breastpin."

「どう読み取ったかなどと説明して、あなたの知性を侮るつもりはない。なにしろ結社の厳しい決まりにいささか背いて、弧とコンパスをかたどった胸ピンをつけているのだからね」

"Ah, of course, I forgot that. But the writing?"

「ああ、そうか、それを忘れていました。でも、書き物のほうは?」

"What else can be indicated by that right cuff so very shiny for five inches, and the left one with the smooth patch near the elbow where you rest it upon the desk?"

「右の袖口が五インチにわたってあんなにてかてかに光り、左の袖には、机につくひじのあたりにすべすべした擦れがある。それが書き物のほかに何を示すというのかね?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • snuff(スナフ)… 嗅ぎたばこ難
  • freemasonry(フリーメイスンリー)… (暗黙の)仲間意識・結束・フリーメイソンの制度難
  • arc-and-compass(アークアンドコンパス)… 弧とコンパスの(フリーメイソンの印)難
  • breastpin(ブレストピン)… 胸ピン・ネクタイピン難
  • intelligence(インテリジェンス)… 知性・知能
  • developed(ディヴェロップト)… 発達した・発展した(develop の過去形・過去分詞)
  • indicated(インディケイティッド)… 指し示した
  • insult(インサルト)… 侮辱する・ばかにする・侮辱

次の場面:魚の入れ墨 The Fish Tattoo

ホームズは、最後に残った中国の謎も解いてみせる。手首の魚の入れ墨は、うろこを淡い桃色に染める中国独特の技法で彫られたもので、時計の鎖には中国の硬貨まで下がっている。入れ墨の研究までしているというホームズの説明を聞き終えると、ウィルソン氏は大笑いする。種を明かされれば何でもない、というわけだ。