Scene 08 · Notes

解説 場面 8「例の広告」

この場面の解説

種明かしを聞いてウィルソン氏が感心しなくなったのを見て、ホームズはワトソンに、説明しすぎると評判を落とすとぼやく。そしてウィルソン氏が、すべての始まりとなった新聞広告をようやく見つけ出す。

表現・文法のポイント

I make a mistake in explaining
make a mistake in ~ing で「~するのは間違いだ、~してしくじる」。種明かしをすると推理が平凡に見えてしまう、という嘆きで、推理を自慢したいホームズの人間くさい一面がのぞく。
Omne ignotum pro magnifico
ラテン語で「未知のものはすべて立派なものと思われる」。古代ローマの歴史家タキトゥスの言葉だ。種が分からないうちは驚かれるが、分かってしまえば感心されない、という意味でホームズは引いている。
such as it is
「大したものではないが、一応」と、自分のものを謙遜して添える決まり文句。my poor little reputation と合わせて、わざと大げさにへりくだった冗談になっている。
will suffer shipwreck if I am so candid
suffer shipwreck は「難破する」から転じて「台なしになる、つぶれる」。評判を船にたとえた比喩だ。candid は「率直な」で、「こんなに正直に手の内を明かしていたら、評判が沈没してしまう」という大げさな言い方になっている。

背景・時代

ラテン語の格言(Latin)
当時の教養ある紳士は学校でラテン語を学び、会話や文章にラテン語の格言を引くことがよくあった。ホームズもその一人で、ここではタキトゥスの言葉をさりげなく持ち出している。

全文の対訳

"I begin to think, Watson," said Holmes, "that I make a mistake in explaining. 'Omne ignotum pro magnifico,' you know, and my poor little reputation, such as it is, will suffer shipwreck if I am so candid. Can you not find the advertisement, Mr. Wilson?"

「ワトソン、どうやら」とホームズは言った。「種明かしをするのは失敗らしいと思えてきたよ。『知られざるものはすべて立派に見える』と言うだろう。こんなに正直に話していたら、大したものでもない私のささやかな評判など、難破してしまう。ウィルソンさん、広告はまだ見つからないのかね?」

"Yes, I have got it now," he answered with his thick red finger planted halfway down the column. "Here it is. This is what began it all. You just read it for yourself, sir."

「ええ、今見つけました」と彼は答え、太く赤い指を欄の中ほどに押し当てた。「これです。すべてはこれから始まったんでして。まあ、ご自分で読んでみてください」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • omne(オムニ)… (ラテン語)すべての難
  • ignotum(イグノウタム)… (ラテン語)知られていないもの・未知のもの難
  • pro(プロウ)… (ラテン語)〜として・〜の代わりに・プロ(の)難
  • magnifico(マグニフィコウ)… (ラテン語)立派なもの・すばらしいもの難
  • shipwreck(シップレック)… 難破難
  • candid(キャンディッド)… 率直な・正直な難
  • advertisement(アドヴァーティスメント)… 広告
  • reputation(レピュテイション)… 評判・名声

次の場面:赤毛組合の募集 The League's Notice

ワトソンはウィルソン氏から新聞を受け取り、広告を読む。赤毛の男子に限り、まったく名目だけの仕事で週四ポンドの給料が出るという、なんとも奇妙な募集だ。わけが分からず声を上げるワトソンをよそに、ホームズは上機嫌で椅子の上で身をよじり、ウィルソン氏に身の上話を初めから聞かせてほしいと頼む。