Scene 22 · Notes

解説 場面 22「勤務は十時から二時」

この場面の解説

独身では空きはもらえないのかと落胆したウィルソンだが、ロスは見事な赤毛に免じて特別に認める。店のことはスポールディングが引き受けると言い、勤務は十時から二時までだと告げられる。

表現・文法のポイント

My face lengthened at this
lengthen は「長くなる」。顔が長くなる、つまり「がっかりして浮かない顔になる」ことで、a long face(浮かない顔)と同じ発想の言い方だ。at this は「これを聞いて」で、感情が起きたきっかけを表す。
we must stretch a point in favour of a man
stretch a point は「(規則などを)曲げて大目に見る、特別に融通をきかせる」。in favour of ~ は「~のために、~に有利になるように」。favour は英国つづりで、アメリカでは favor と書く。
When shall you be able to enter upon your new duties?
enter upon ~ は「(職務などに)就く、取りかかる」。shall you は相手の予定を尋ねる古風で改まった言い方で、今なら When can you start? くらいの意味。duties は「職務」で、ここでは組合での務めを指す。
Ten to two.
勤務時間を聞かれた答えなので「十時から二時まで」で、from ten to two の from が省かれている。時刻を言う場面なら ten to two は「2時10分前」の意味になるので、文脈で区別する。

全文の対訳

"My face lengthened at this, Mr. Holmes, for I thought that I was not to have the vacancy after all; but after thinking it over for a few minutes he said that it would be all right.

「これを聞いて私は浮かない顔になりましてね、ホームズさん、結局その空きはいただけないのかと思ったのですが、彼は数分考えたあとで、それでかまわないと言ってくれたんです。

"'In the case of another,' said he, 'the objection might be fatal, but we must stretch a point in favour of a man with such a head of hair as yours. When shall you be able to enter upon your new duties?'

「『ほかの人なら』と彼は言いました。『この点は命取りになるところですが、あなたほど見事な髪の方のためなら、少々大目に見ねばなりますまい。新しいお務めには、いつから就けますかな?』

"'Well, it is a little awkward, for I have a business already,' said I.

「『それが、少々困ったことに、私にはもう商売がありまして』と私は言いました。

"'Oh, never mind about that, Mr. Wilson!' said Vincent Spaulding. 'I should be able to look after that for you.'

「『なあに、そんなことは気になさらなくていいですよ、ウィルソンさん!』とヴィンセント・スポールディングが言いました。『店のほうは私が見ておけますから』

"'What would be the hours?' I asked.

「『勤務時間は何時から何時までで?』と私は尋ねました。

"'Ten to two.'

「『十時から二時までです』

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • lengthened(レングスンド)… 長く伸びた・長くなった(lengthen の過去形)・(My face lengthened で)がっかりして浮かない顔になった
  • objection(オブジェクション)… 難点・差し支え・反対
  • vacancy(ヴェイカンスィー)… 欠員・空き・空室
  • stretch(ストレッチ)… (規則などを)曲げる・伸ばす。stretch a point で「特別に大目に見る」
  • awkward(オークワード)… 困った・具合の悪い・ぎこちない
  • favour(フェイヴァー)… ひいき・好意(英国つづり)。in favour of で「〜のために・〜に有利に」
  • duties(デューティーズ)… 務め・職務(duty の複数形)
  • fatal(フェイタル)… 命取りの・致命的な

次の場面:週四ポンド Four Pounds a Week

質屋の商売は給料日前の夕方が忙しく、午前中に稼げるのはウィルソンには好都合だ。店は信頼する助手に任せればよい。乗り気になった彼が給料を尋ねると、週に四ポンドだという。仕事のほうはほんの名ばかりだと聞かされ、ウィルソンはその意味を問い返す。