第 2 章(II)百科事典を写す仕事The Red-Headed League

応募の日、フリート街は赤毛の男たちであふれかえる。ウィルソンは面接を通り、毎日事務所で百科事典を書き写すだけで、週に四ポンドを受け取るようになる。楽な仕事は八週間続いた。ところがある朝、事務所の扉には思いもよらない一枚の貼り紙があった。

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  1. 18赤毛の大行列 A Sea of Red Headsウィルソンとスポールディングが広告の宛先に着くと、そこは赤毛の男たちであふれ返っている。フリート街は赤毛で埋まり、色合いも麦わら色かられんが色までさまざまだ。あまりの人数にウィルソンはあきらめかけるが、助手は人波を押し分け、彼を事務所の中まで連れていく。
  2. 19面接の小男 The Little Manager人ごみを抜けて事務所に入ると、そこには椅子が二脚とテーブルがあるだけだった。座っているのは、ウィルソンよりさらに赤い髪の小柄な男だ。男は応募者を次々に不合格にしていくが、ウィルソンの番になるとドアを閉め、彼の髪をしげしげと眺める。そして飛びつくように手を握り、合格を祝う。
  3. 20髪を引っぱる The Hair Test髪をじっと眺めた小男は、ウィルソンこそ組合にふさわしいと言う。だが念のためと断って、両手で髪をつかみ、悲鳴が上がるまで引っぱる。過去にはかつらや染料でだまそうとした者がいたらしい。本物と確かめると、男は窓から空きは埋まったと叫び、外の赤毛の群れは散っていく。
  4. 21独身ではだめ? No Family?本物の赤毛と認められたウィルソンに、小柄な支配人はダンカン・ロスと名乗る。自分も、組合を遺した恩人の基金から年金を受ける一人だという。ところが、結婚しているか、家族はいるかと尋ね、ウィルソンが独り身だと知ると、ロスはとたんに顔を曇らせ、これはゆゆしいことだと言い出す。
  5. 22勤務時間 The Hours独身では困ると言われ、ウィルソンは空きを逃したかとがっかりする。支配人はしばらく考えこんだあと、口を開く。店のことが気がかりなウィルソンの横には、助手のスポールディングが付き添っている。勤めの中身や時間のことは、まだ何も聞かされていない。
  6. 23週四ポンド Four Pounds a Week質屋の商売は給料日前の夕方が忙しく、午前中に稼げるのはウィルソンには好都合だ。店は信頼する助手に任せればよい。乗り気になった彼が給料を尋ねると、週に四ポンドだという。仕事のほうはほんの名ばかりだと聞かされ、ウィルソンはその意味を問い返す。
  7. 24部屋を出るな Never Leave the Room「名ばかり」の中身は、勤務時間中ずっと事務所に、少なくとも建物の中にいることだ。一歩でも出れば地位は永久に失われ、遺言はその点に厳しいとロスは言う。たった四時間なら出ていく気などないと答えるウィルソンに、ロスは病気も商売も言いわけにならないと念を押す。
  8. 25百科事典の写し Copy the Encyclopaedia肝心の仕事は、ブリタニカ百科事典を書き写すことだ。インクやペン、吸い取り紙は自分持ちで、机と椅子は組合が用意するという。明日から来られると答えたウィルソンは、ロスに改めて祝いの言葉をかけられて送り出される。思いがけない幸運に、帰り道は何を言えばいいかもわからないほどだ。
  9. 26疑いと初出勤 Doubts and a First Day一日考えるうちに、ウィルソンはまた気がふさいでくる。そんな遺言があるはずはなく、百科事典を写すだけで大金を払うなど信じがたい。これは悪ふざけか詐欺にちがいないと思い込む。それでも翌朝、とにかく行ってみようと決め、インクと羽根ペン、紙を買い込んでポープス・コートへ向かう。
  10. 27写し続ける日々 Weeks of Copying驚いたことに、事務所ではすべてが約束どおりに整っている。ウィルソンはAの項から書き写しはじめ、二時になるとロスがその仕事ぶりをほめて送り出す。土曜日には一週間分としてソヴリン金貨四枚が支払われる。やがてロスはほとんど姿を見せなくなるが、ウィルソンは決して部屋を離れない。
  11. 28ある朝 One Morningウィルソンは、八週間のあいだ毎日、百科事典を書き写してきた。書きためた紙は棚ひとつを埋めるほどで、まもなくBの項に進めそうなところまで来ている。紙代もばかにならないが、仕事は順調だ。話はここで、いよいよウィルソンが今朝のことを語る場面へ移る。
  12. 29貼り紙の文句 What the Card Saidウィルソンが差し出したのは、扉に鋲で留めてあった白い厚紙だ。ホームズとワトソンは、そこに書かれた文句と依頼人の情けない顔を見比べ、こらえきれず笑いだす。真っ赤になって腰を浮かすウィルソンを、ホームズは椅子に押し戻し、貼り紙を見てどうしたのかと尋ねる。
  13. 30大家の証言 The Landlord貼り紙を前にして、ウィルソンは途方に暮れる。近所の事務所を回って尋ねてみたが、どこも様子は分からない。最後に、一階に住む会計士の大家を訪ね、赤毛組合のことと、ダンカン・ロスという男のことを、何か知らないかと尋ねる。
  14. 31新しい事務所 The New Offices大家は、四号室を借りていた男のことなら知っていると言う。ウィルソンは、その男にいまどこで会えるのかを尋ねる。すると大家は、新しい事務所の住所を教えてくれた。ウィルソンは、その住所へ向けて急ぎ足で歩き出した。そこで待っているものを、彼はまだ知らない。
  15. 32相談に来た理由 Why He Came教えられた住所は人工ひざ皿の製造所で、モリスもロスも誰も知らなかった。行き詰まったウィルソンは家に戻って助手に相談するが、助手は郵便で知らせが来るのを待つしかないと言うだけだ。それでは納得できない彼は、ホームズのもとを訪れた理由を語り終える。
  16. 33損はしていない Nothing Lostホームズはウィルソンの件を引き受け、見かけ以上に重大な問題が潜んでいるかもしれないと告げる。だがウィルソンにとって重大なのは、週四ポンドの収入を失ったことだ。ホームズは、あなた自身は少しも損をしていないと指摘するが、ウィルソンは相手の正体を知りたいと言い張る。
  17. 34助手について About the Assistantホームズは、損をしていないというウィルソンの不満を受けとめつつ、謎の組合のことは自分たちが解き明かすよう努めると言う。そして、まず一つ二つ質問をしたいと切り出す。ウィルソンは、何を聞かれるのかと居ずまいを正す。ホームズの問いは短く、矢継ぎ早だ。
  18. 35助手の人相 What the Assistant Looks Like広告に応じてきた十二人ほどの中から、ウィルソンは気が利いて給金の安い男を助手に選んだ。半分の給金でも喜んで働く、その奇特な助手ヴィンセント・スポールディングとは、どんな男なのか。ホームズは彼の見た目を詳しく尋ねる。ウィルソンの答えのある一点に、ホームズは思わず身を起こす。
  19. 36月曜までに By Monday助手の見た目を聞いたホームズは、椅子に身を沈めて深く考えこむ。助手は今も店にいるのか、留守のあいだ店は回っているのか。ホームズはいくつか確かめたうえで、一両日のうちに考えを伝えると言い、ウィルソンを帰すことにする。