Scene 28 · Notes

解説 場面 28「突然の終わり」

この場面の解説

八週間、ウィルソンは A の項目を写し続け、書いた紙は棚を埋めるほどになった。ところがホームズを訪ねたこの日の朝、事務所のドアには鍵がかかり、小さな厚紙が鋲で留めてあった。

表現・文法のポイント

Abbots and Archery and Armour and Architecture and Attica
A で始まる項目を and で次々とつなぎ、百科事典を A から順に写してきたことを示している。Abbot(修道院長)、Archery(弓術)、Armour(甲冑)、Architecture(建築)、Attica(アテネを中心とする古代ギリシャの地方)。and の重ねがけで、延々と続く単調な作業ぶりが伝わる。
hoped with diligence that I might get on to the B's
with diligence は「勤勉に、せっせと」。get on to ~ は「(次の段階に)進む」。B's は「B の項目」で、文字の複数形はこのように 's をつけて書くことがある。A の項目だけで八週間かかった、という皮肉な数字でもある。
It cost me something in foolscap
cost は「(費用が)かかる」で、過去形も cost。cost me something in ~ は「~の分でいくらか出費がかさんだ」。紙は自分持ちという約束だったので、書けば書くほど紙代がかかったのだ。
And no later than this morning.
no later than ~ は「遅くとも~までに」が基本の意味だが、ここでは「ほかでもない~に、つい~に」。「それもつい今朝のことなんです」と、事件がたった今起きたばかりであることを強調している。

全文の対訳

"Eight weeks passed away like this, and I had written about Abbots and Archery and Armour and Architecture and Attica, and hoped with diligence that I might get on to the B's before very long. It cost me something in foolscap, and I had pretty nearly filled a shelf with my writings. And then suddenly the whole business came to an end."

「こうして八週間が過ぎ、私は修道院長や弓術や甲冑や建築やアッティカについて書き写して、この調子でせっせと励めば、まもなく B の項に進めるだろうと思っていました。紙代もそこそこかかりましたが、書いたものでもう棚がひとつ埋まりそうなほどでした。ところが突然、何もかもが終わってしまったんです」

"To an end?"

「終わったと?」

"Yes, sir. And no later than this morning. I went to my work as usual at ten o'clock, but the door was shut and locked, with a little square of cardboard hammered on to the middle of the panel with a tack. Here it is, and you can read for yourself."

「ええ、そうなんです。それもつい今朝のことです。いつもどおり十時に仕事に行きますと、ドアは閉まって鍵がかかっていて、扉板の真ん中に小さな四角い厚紙が鋲で留めてありました。これがそうです、どうぞご自分でお読みください」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • abbots(アボッツ)… 修道院長(abbot の複数形)難
  • diligence(ディリジェンス)… 勤勉・熱心さ難
  • foolscap(フールスキャップ)… フールスキャップ紙(大判の筆記用紙)難
  • tack(タック)… 鋲・びょう・画びょう難
  • architecture(アーキテクチャー)… 建築・建築様式
  • cardboard(カードボード)… 厚紙・ボール紙
  • writings(ライティングズ)… 書いたもの・著作(writing の複数形)
  • hammered(ハマード)… (くぎなどで)打ちつけた(hammer の過去形・過去分詞)

次の場面:組合は解散 The League Dissolved

ウィルソンが差し出した厚紙には、赤毛組合の解散を告げる短い文句と日付だけが書かれている。そのそっけなさと依頼人の情けない顔に、ホームズとワトソンはこらえきれず笑いだす。真っ赤になって腰を浮かすウィルソンを、ホームズは椅子に押し戻し、貼り紙を見てどうしたのかと尋ねる。