Scene 29 · Notes

解説 場面 29「組合は解散」

この場面の解説

厚紙には「赤毛組合は解散いたしました」とだけあり、ホームズとワトソンは思わず大笑いする。腹を立てて帰ろうとするウィルソンを、ホームズは引き止め、貼り紙を見つけてから何をしたのかと尋ねる。

表現・文法のポイント

It read in this fashion:
read はここでは「(文面が)~と書いてある、~と読める」という自動詞で、過去形も read(発音はレッド)。in this fashion は「このように」で、fashion は「流行」ではなく「やり方、様式」の意味だ。
so completely overtopped every other consideration that
so ~ that … は「とても~なので…」。overtop は「上回る、圧倒する」。事の滑稽さが、依頼人への気づかいなど、ほかのあらゆる考えをすっかり押しのけてしまい、とうとう笑いだしてしまったという流れだ。
burst out into a roar of laughter
burst out into ~ は「どっと~しだす」で、こらえていたものが一気にあふれる感じ。a roar of laughter は「とどろくような大笑い」。burst out laughing とも言える。
I really wouldn't miss your case for the world.
not ~ for the world は「世界をくれると言われても~しない」、つまり「何があっても~しない」。miss は「逃す」。「あなたの事件を逃すなんてとんでもない」と、怒る依頼人をなだめている。

全文の対訳

He held up a piece of white cardboard about the size of a sheet of note-paper. It read in this fashion:

彼は便箋一枚ほどの大きさの白い厚紙をかざしてみせた。そこにはこう書かれていた。

"THE RED-HEADED LEAGUE IS DISSOLVED. October 9, 1890."

「赤毛組合は解散いたしました。一八九〇年十月九日」

Sherlock Holmes and I surveyed this curt announcement and the rueful face behind it, until the comical side of the affair so completely overtopped every other consideration that we both burst out into a roar of laughter.

シャーロック・ホームズと私は、このそっけない告知と、その向こうの情けなさそうな顔とを見比べていたが、やがて事の滑稽さがほかのあらゆる思いをすっかり押しのけてしまい、二人そろって大声で笑いだした。

"I cannot see that there is anything very funny," cried our client, flushing up to the roots of his flaming head. "If you can do nothing better than laugh at me, I can go elsewhere."

「何がそんなにおかしいのか、私にはさっぱりわかりませんがね」と依頼人は叫び、燃えるような赤毛の生えぎわまで真っ赤になった。「私を笑うことしかできないのなら、よそへ参りますよ」

"No, no," cried Holmes, shoving him back into the chair from which he had half risen. "I really wouldn't miss your case for the world. It is most refreshingly unusual. But there is, if you will excuse my saying so, something just a little funny about it. Pray what steps did you take when you found the card upon the door?"

「いやいや」とホームズは叫び、腰を浮かしかけた彼を椅子へ押し戻した。「あなたの事件を聞き逃すなど、とんでもない。実に新鮮で、めったにない事件だ。だが、こう言っては失礼だが、少しばかりおかしなところがあるのも確かでね。それで、ドアの貼り紙を見つけて、あなたはどうしたのかね?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • curt(カート)… そっけない・ぶっきらぼうな難
  • rueful(ルーフル)… 情けなさそうな・悲しげな・悔やむような難
  • overtopped(オウヴァートップト)… 上回った・圧倒した(overtop の過去形)難
  • refreshingly(リフレッシングリー)… 新鮮なほど・すがすがしいほど難
  • consideration(コンスィダレイション)… 考え・考慮・思いやり
  • announcement(アナウンスメント)… 告知・発表・お知らせ
  • note-paper(ノートペイパー)… 便箋・手紙用の紙
  • red-headed(レッドヘディッド)… 赤毛の

次の場面:大家の証言 The Landlord

貼り紙を前に、ウィルソンは途方に暮れる。近所の事務所を回って尋ねても、誰も何も知らない。最後に、一階に住む会計士の家主を訪ねるが、そんな団体は聞いたこともないし、ダンカン・ロスという名にも覚えがないという。四号室の紳士だと言うと、家主は「あの赤毛の男か」と聞き返す。