Scene 39 · Notes

解説 場面 39「音楽会へ」

この場面の解説

今日は用事がないと答えたワトソンに、ホームズは帽子をかぶって来るよう言う。途中でシティを通って昼食をとり、好みのドイツ音楽が多い演奏会で、じっくり内省にふけりたいのだという。

表現・文法のポイント

My practice is never very absorbing.
practice はここでは「(医師や弁護士の)開業、診療所」。absorbing は「夢中にさせる、手が離せない」。「私の診療所はちっとも忙しくない」という、ワトソンらしい謙遜まじりの言い方だ。
which is rather more to my taste than Italian or French
to one's taste で「~の好みに合って」。which は前の内容(ドイツの曲が多いこと)全体を受ける、非制限用法の関係代名詞。rather more は「いくぶん多く」で、イタリアやフランスの曲よりも好みだ、ということ。
It is introspective, and I want to introspect.
形容詞 introspective「内省的な」と、動詞 introspect「内省する」を並べた言葉遊び。音楽に身をゆだねながら、自分の考えを深めたいというホームズの気分を表している。

背景・時代

シティ(the City)
ロンドン中心部の古い市域で、商業や金融の中心地。the City と大文字で書くとこの地区を指す。ベイカー街から東へ向かうと、この界隈を通ることになる。

全文の対訳

"I have nothing to do to-day. My practice is never very absorbing."

「今日は何も用事がないよ。私の診療所は、手が離せないほど忙しくなることなんてないからね」

"Then put on your hat and come. I am going through the City first, and we can have some lunch on the way. I observe that there is a good deal of German music on the programme, which is rather more to my taste than Italian or French. It is introspective, and I want to introspect. Come along!"

「それなら帽子をかぶって、一緒に来たまえ。まずシティを通っていくから、途中で昼食をとろう。プログラムを見ると、ドイツの曲がたっぷり入っていて、こちらのほうがイタリアやフランスの曲よりも私の好みに合うのだ。ドイツ音楽は内省的だし、私はいま内省したい気分なのさ。さあ、行こう!」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • absorbing(アブソービング)… 夢中にさせる・手が離せない・吸収する(absorb の -ing 形)難
  • introspective(イントロスペクティヴ)… 内省的な・考え込むような難
  • introspect(イントロスペクト)… 内省する・自分の心を見つめる難
  • observe(オブザーヴ)… 観察する・(観察して)分かる
  • rather(ラーザ)… (言い直して)むしろ・いや・かなり

次の場面:コバーグ・スクエア Saxe-Coburg Square

ホームズに誘われ、ワトソンはサラサーテの演奏会へ向かう前に、シティ方面へ出かける。二人が地下鉄を降りて歩いて行った先は、その朝に聞いた奇妙な話の舞台、ウィルソンの質屋があるサックス・コバーグ・スクエアだった。ホームズは店の前で立ち止まり、あたりをじっくりと眺め始める。