第 3 章(III)コバーグ・スクエアThe Red-Headed League

依頼人が帰ると、ホームズはパイプをくゆらせて黙りこむ。やがて立ち上がり、ワトソンを連れて質屋のあるコバーグ・スクエアへ出かける。ホームズはそこで奇妙なふるまいを見せ、午後は音楽会で過ごす。そして別れぎわ、今夜は危険が待っていると告げる。

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  1. 37奇妙なほど単純 Bizarre Means Simpleホームズは、今日は土曜日だから月曜までには結論を出したいと告げ、赤毛の依頼人を帰した。部屋に残ったホームズとワトソンは、この奇妙な一件について語り合う。さっぱり分からないと正直に答えるワトソンに、ホームズは事件の奇妙さと謎の深さについて、意外な持論を語る。
  2. 38パイプ三服の問題 A Three Pipe Problem奇妙な事件ほど謎は浅く、平凡な犯罪こそ厄介だと語ったホームズは、この件は急がねばならないと言う。では、これから何をするのか。ワトソンの問いに対するホームズの答えは、意外にもただ一言、たばこを吸う、というものだった。ホームズは椅子の上で目を閉じる。
  3. 39音楽会へ Off to the Concertパイプ三服ぶんのあいだ黙って考え込んでいたホームズは、急に跳び起きると、午後にセント・ジェイムズ・ホールで開かれるサラサーテの演奏会にワトソンを誘う。患者は大丈夫かと聞かれたワトソンは、今日は用事がないと答える。ホームズはさっそく出かける支度を促す。
  4. 40コバーグ・スクエア Saxe-Coburg Squareホームズに誘われ、ワトソンはサラサーテの演奏会へ向かう前に、シティ方面へ出かける。二人が地下鉄を降りて歩いて行った先は、その朝に聞いた奇妙な話の舞台、ウィルソンの質屋があるサックス・コバーグ・スクエアだった。ホームズは店の前で立ち止まり、あたりをじっくりと眺め始める。
  5. 41道を尋ねる Asking the Way質屋の戸口に現れたのは、ひげのない身ぎれいな若い助手だった。ホームズはストランド街への道を尋ねるだけで、すぐに引き上げる。歩き出すと、ホームズはこの若者をロンドンでも指折りの切れ者だと評し、以前から知っていると言う。ワトソンは、道を尋ねたのは助手の顔を見るためだったのだと考える。
  6. 42ズボンのひざ The Knees of His Trousersワトソンは、ホームズが道を尋ねたのは助手を見るためだと考えた。だがホームズの答えは意外なものだった。見たかったのは本人ではなく、ズボンのひざだという。歩道をステッキで叩いた理由も、今は話すときではないと取り合わない。二人は広場の裏手を探りに向かう。
  7. 43裏手のにぎわい The Busy Street Behind閑静なサックス・コバーグ・スクエアから角を曲がると、景色は一変する。そこはシティから北と西へ人と物を運ぶ大通りの一つで、車道は行き交う荷馬車でふさがり、歩道は急ぐ人の群れで黒く見えるほどだ。立派な店や商社が並ぶこの通りが、さっきのさびれた広場と背中合わせだとは、とても信じられない。
  8. 44店の並び The Order of the Houses大通りの角に立ったホームズは、ここに並ぶ建物の順番を覚えておきたいと言う。ロンドンを正確に知っておくのが趣味なのだ。たばこ屋、新聞屋、銀行の支店、菜食レストラン、馬車製造所と、店を一つずつ挙げていく。調べものを終えると、サンドイッチとコーヒーで腹ごしらえをして、いよいよ音楽会へ向かうことにする。
  9. 45音楽家ホームズ Holmes the Musicianセント・ジェイムズ・ホールの客席で、ホームズは午後じゅう音楽に浸り、細長い指で拍子をとっている。その夢見るような顔は、獲物を追う探偵の顔とはまるで別人だ。ワトソンは、彼の中に詩人と猟犬という二つの性質が交互に現れることをよく知っている。そして、彼が最も手ごわいのは、何日も椅子でぼんやり過ごした後なのだ。
  10. 46今夜、犯罪が A Crime Tonight音楽会が終わって外へ出ると、ホームズはワトソンに家へ帰りたいだろうと声をかける。自分はこれから数時間かかる用事があるという。そして、コバーグ・スクエアの一件は重大だと言い出す。大きな犯罪がたくらまれていて、今日が土曜日なのが事を面倒にしているらしい。ホームズは今夜十時に手を貸してほしいと頼む。
  11. 47拳銃を持って Bring Your Revolver十時にベイカー街へ行くと約束したワトソンに、ホームズは軍用の拳銃を持ってくるよう言い残し、人ごみに消える。同じものを見聞きしたのに、ワトソンには何が起ころうとしているのかまるで分からない。ケンジントンの家へ帰る馬車の中で、夜の遠出の意味や、あの質屋の助手が手ごわい男だというホームズの言葉を考え続ける。