Scene 49 · Notes

解説 場面 49「二人の同行者」

この場面の解説

ジョーンズは、ホームズと組んでまた狩りに出るのだと、もったいぶって言う。浮かない顔のメリーウェザーに、ジョーンズはホームズには探偵の素質があり、過去の事件では警察より正しかったこともあると請け合う。メリーウェザーはそれを受け入れつつ、二十七年続けてきた土曜の夜のカード遊びができないのが残念だとこぼす。

表現・文法のポイント

We're hunting in couples again
hunt in couples は、猟犬を二匹ずつつないで狩りをすることから「二人一組で動く」。ジョーンズは以前の事件でもホームズたちと組んだことがあり、また一緒に狩りに出る、とおどけている。
I hope a wild goose may not prove to be the end of our chase
a wild-goose chase(野生のガンを追いかけること)は「捕まるはずのないものを追う、無駄な骨折り」という決まった言い方。それを崩して「追いかけた末に捕まえたのが野ガンだった、とならねばよいが」と皮肉っている。
if he won't mind my saying so
「こう言っては失礼かもしれないが」という前置き。my saying は動名詞 saying の意味上の主語を所有格 my で示した形で、「私がそう言うこと」。相手を少しけなす前に使う決まり文句だ。
seven-and-twenty years
seven-and-twenty は twenty-seven(27)の古い言い方。一の位を先に言う数え方は、ドイツ語などにも残っている。堅苦しい銀行家らしい、古風な響きのある言い回しになっている。

背景・時代

ラバー(rubber)
ホイストやブリッジなどのトランプ遊びで、三回勝負のうち二回先に勝ったほうが勝ちとなるひと区切りを rubber と呼ぶ。土曜の夜にクラブで仲間とホイストをするのは、当時の紳士のたしなみだった。
ショルトー殺しとアグラの財宝(the Sholto murder and the Agra treasure)
ホームズ物語の長編『四つの署名』の事件。そこではアセルニー・ジョーンズという警部が捜査にあたり、最後はホームズの推理に頼ることになった(この話のピーター・ジョーンズと同じ人物かどうかははっきりしない)。ワトソンが妻メアリーと出会ったのもこの事件だった。

全文の対訳

"We're hunting in couples again, Doctor, you see," said Jones in his consequential way. "Our friend here is a wonderful man for starting a chase. All he wants is an old dog to help him to do the running down."

「またそろって狩りというわけですな、先生」と、ジョーンズがもったいぶった調子で言った。「こちらのご友人は、獲物を狩り出すことにかけてはたいしたものでしてな。あとは、追いつめる役を手伝う老犬が一匹いれば十分というわけです」

"I hope a wild goose may not prove to be the end of our chase," observed Mr. Merryweather gloomily.

「追いかけた末が、骨折り損に終わらなければよいのですが」と、メリーウェザー氏が浮かない顔で言った。

"You may place considerable confidence in Mr. Holmes, sir," said the police agent loftily. "He has his own little methods, which are, if he won't mind my saying so, just a little too theoretical and fantastic, but he has the makings of a detective in him. It is not too much to say that once or twice, as in that business of the Sholto murder and the Agra treasure, he has been more nearly correct than the official force."

「ホームズさんなら大いに信用してよろしいですよ」と、警察の捜査官は偉そうに言った。「この人には独特のやり方がありましてな、こう言ってはなんですが、それがいささか理屈に走りすぎ、突拍子もないのですが、探偵の素質はちゃんと持っておるんです。あのショルトー殺しとアグラの財宝の一件のように、一度か二度は、警察よりも真相に近かったと言っても言いすぎじゃありません」

"Oh, if you say so, Mr. Jones, it is all right," said the stranger with deference. "Still, I confess that I miss my rubber. It is the first Saturday night for seven-and-twenty years that I have not had my rubber."

「いや、あなたがそうおっしゃるなら、ジョーンズさん、異存はございません」と、初対面の紳士はうやうやしく言った。「ただ、正直に申しますと、いつものカードの勝負ができないのが寂しいのです。土曜の夜に勝負をしないのは、この二十七年で初めてなのですから」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • consequential(コンスィクウェンシャル)… もったいぶった・偉そうな・重大な難
  • gloomily(グルーミリー)… 憂うつそうに・浮かない顔で難
  • loftily(ロフティリー)… 偉そうに・高慢に難
  • makings(メイキングズ)… 素質・素地難
  • deference(デファレンス)… 敬意・相手を立てること難
  • rubber(ラバー)… (ホイストなどの)三番勝負・ゴム難
  • seven-and-twenty(セヴンアンドトウェンティ)… 二十七(古い言い方)難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な

次の場面:ジョン・クレイ John Clay

ホームズはメリーウェザーに、今夜はいつものカード遊びより大きな勝負になると告げる。賭け金はおよそ三万ポンド。ジョーンズにとっての獲物は、彼が長年追い続けてきた男だという。その名はジョン・クレイ。殺人に盗み、偽造までこなす、名家の出の若き大悪党だ。一同は二台の辻馬車に分かれて出発する。