Scene 12 · Notes

解説 場面 12「駆け込んできた男」

この場面の解説

守衛のピーターソンが、頬を真っ赤にして駆け込んでくる。妻がガチョウの餌袋の中から見つけたという、豆より小さな、まばゆく光る青い石を手のひらにのせて見せる。ホームズは口笛を鳴らして身を起こし、これはまさに掘り出し物の宝だと言う。

表現・文法のポイント

the door flew open
fly open は「(ドアなどが)ぱっと勢いよく開く」。fly は「飛ぶ」から「さっと動く」の意味に広がった。had opened his mouth to reply, when 〜 は「〜しかけたそのとき」という形で、急な出来事を表す。
Has it returned to life and flapped off
ホームズのとぼけた冗談。食べるために絞めたはずのガチョウが、生き返って羽ばたいて逃げたのかね、と聞いている。flap off は「羽ばたいて飛び去る」。慌てる守衛との落差がおかしみを生む。
rather smaller than a bean in size
rather はここで「いくらか、やや」。in size は「大きさの点で」。豆粒よりやや小さい、という身近なたとえで、小さいのに強く光る石の様子を目に浮かぶように描いている。
By Jove
「これは驚いた」「なんとまあ」という古風な驚きの叫び。Jove はローマ神話の主神ユピテル(ジュピター)の別名で、神の名を直接口にせずに誓う、当時の紳士らしい言い方だ。

背景・時代

掘り出し物の宝(treasure trove)
もとは、持ち主の分からないまま見つかった金銀の財宝を指す法律の言葉。ここではホームズが、思いがけず転がり込んだ宝物、という意味で、冗談まじりに使っている。

全文の対訳

Sherlock Holmes had opened his mouth to reply, when the door flew open, and Peterson, the commissionaire, rushed into the apartment with flushed cheeks and the face of a man who is dazed with astonishment.

シャーロック・ホームズが答えようと口を開いたそのとき、ドアが勢いよく開き、守衛のピーターソンが、頬を紅潮させ、驚きのあまりぼうぜんとした顔で部屋に駆け込んできた。

"The goose, Mr. Holmes! The goose, sir!" he gasped.

「ガチョウが、ホームズさん!ガチョウがですよ、旦那!」と彼はあえぎながら言った。

"Eh? What of it, then? Has it returned to life and flapped off through the kitchen window?" Holmes twisted himself round upon the sofa to get a fairer view of the man's excited face.

「え?それがどうしたのかね?生き返って、台所の窓から羽ばたいて逃げていったのかね?」ホームズは男の興奮した顔をよく見ようと、ソファの上で体をひねった。

"See here, sir! See what my wife found in its crop!" He held out his hand and displayed upon the centre of the palm a brilliantly scintillating blue stone, rather smaller than a bean in size, but of such purity and radiance that it twinkled like an electric point in the dark hollow of his hand.

「これを見てください、旦那!女房がこいつの餌袋の中から見つけたものを、見てくださいよ!」彼は手を差し出し、手のひらの真ん中にのせた、まばゆくきらめく青い石を見せた。それは豆粒より少し小さいほどなのに、実に澄みきった輝きで、くぼめた手の暗がりの中で電気の光の点のようにまたたいていた。

Sherlock Holmes sat up with a whistle. "By Jove, Peterson!" said he, "this is treasure trove indeed. I suppose you know what you have got?"

シャーロック・ホームズは口笛を鳴らして身を起こした。「これは驚いた、ピーターソン!」と彼は言った。「まさに掘り出し物の宝だ。自分が何を手に入れたのか、分かっているのだろうね?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • commissionaire(コミッショネア)… 守衛・(ホテルや劇場などの)案内係難
  • dazed(デイズド)… ぼうぜんとした・目がくらんだ難
  • flapped(フラップト)… 羽ばたいた・ぱたぱた動いた(flap の過去形)難
  • scintillating(スィンティレイティング)… きらきら光る・きらめく・(話が)才気あふれる難
  • radiance(レイディアンス)… 輝き・光難
  • jove(ジョウヴ)… (By Jove で)これは驚いた・おや(ローマ神話の神ジュピター)難
  • trove(トロウヴ)… (treasure trove で)掘り出し物・見つかった宝難
  • astonishment(アストニッシュメント)… 驚き・仰天

次の場面:石の値打ち The Worth of a Stone

ピーターソンの妻がガチョウの餌袋から見つけたのは、豆粒より小さいのにまばゆく光る青い石だった。ホームズは口笛を鳴らし、自分が何を手に入れたのか分かっているのかと守衛に尋ねる。ピーターソンは、ガラスも切れるこの石がダイヤモンドではないかと言い出す。