Scene 17 · Notes

解説 場面 17「新聞広告」

この場面の解説

ホームズは鉛筆で、グッジ街で拾ったガチョウと黒いフェルト帽をヘンリー・ベイカー氏に返すという広告文を書く。貧しい男には痛い損失だったから必ず新聞を見るはずだし、名前を出せば知り合いも教えるだろうと言う。広告はピーターソンに託される。

表現・文法のポイント

he is sure to keep an eye on the papers
be sure to 〜 は「きっと〜する」と話し手の確信を表す。確信しているのは彼ではなくホームズのほう。keep an eye on 〜 は「〜から目を離さない、〜に注意している」で、日常でもよく使う。
he thought of nothing but flight
nothing but 〜 は「〜だけ、〜しか(ない)」。flight はここでは「飛ぶこと」ではなく、flee(逃げる)の名詞で「逃走」。逃げることしか頭になかった、という意味になる。
the introduction of his name will cause him to see it
物を主語にした文で、直訳は「彼の名前を入れることが、彼にそれを見させる」。cause 人 to 〜 は「人に〜させる(原因になる)」。日本語では「名前を出せば本人の目に入る」と訳すと自然だ。
Here you are
Here you are は物を手渡すときの「はい、これ」という決まった言い方。ここでは、書き上げたばかりの広告文をピーターソンに渡しながら言っている。Here it is とも言い、店で品物を渡すときにもよく使う。

背景・時代

新聞の広告欄(advertisement)
当時の新聞には、落とし物や尋ね人を知らせる短い広告がたくさん載った。ホームズは事件の調べに、この広告欄をたびたび使っている。

全文の対訳

"Give me a pencil and that slip of paper. Now, then: 'Found at the corner of Goodge Street, a goose and a black felt hat. Mr. Henry Baker can have the same by applying at 6:30 this evening at 221B, Baker Street.' That is clear and concise."

「鉛筆と、その紙切れを取ってくれたまえ。さて、と。『グッジ街の角にて、ガチョウ一羽と黒いフェルト帽を拾得。ヘンリー・ベイカー氏は、今晩六時半にベイカー街 221B にお申し出あれば、お返しする』これなら明快で簡潔だ」

"Very. But will he see it?"

「まったくだ。でも、本人がそれを見るかい?」

"Well, he is sure to keep an eye on the papers, since, to a poor man, the loss was a heavy one. He was clearly so scared by his mischance in breaking the window and by the approach of Peterson that he thought of nothing but flight, but since then he must have bitterly regretted the impulse which caused him to drop his bird. Then, again, the introduction of his name will cause him to see it, for everyone who knows him will direct his attention to it. Here you are, Peterson, run down to the advertising agency and have this put in the evening papers."

「なに、きっと新聞に目を光らせているさ、貧しい男にとっては痛い損失だったのだからね。窓を割ってしまった災難と、ピーターソンが近づいてきたことにすっかりおびえて、逃げることしか頭になかったのは明らかだが、あれからきっと、鳥を落としてしまったあのとっさの行いをひどく悔やんでいるはずだ。それにまた、名前を出しておけば本人の目に入る、彼を知っている者は誰でも、それに彼の注意を向けさせるだろうからね。さあ、ピーターソン、広告取次所へひとっ走りして、これを夕刊に載せてもらってくれたまえ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • mischance(ミスチャーンス)… 不運な出来事・災難難
  • introduction(イントロダクション)… (名前などを)出すこと・紹介・導入
  • advertising(アドヴァタイズィング)… 広告の・広告(advertising agency で「広告取次所」)
  • regretted(リグレッティッド)… 後悔した(regret の過去・過去分詞)
  • applying(アプライイング)… 応募すること・申し込むこと(apply の -ing 形)
  • approach(アプロウチ)… 接近・近づくこと・取り組み方
  • bitterly(ビタリー)… ひどく・激しく・苦々しく
  • concise(コンサイス)… 簡潔な

次の場面:代わりのガチョウ A Goose in Its Place

ホームズは、帽子とガチョウの持ち主に呼びかける短い広告文を書き上げ、夕刊に載せてくるようピーターソンに頼む。どの新聞に出せばいいのかと、ピーターソンは聞き返す。卓の上には、ガチョウの餌袋から出てきた青い石が、まだ置かれたままだ。