Scene 24 · Notes

解説 場面 24「ガチョウの出どころ」

この場面の解説

ホームズは帽子と鳥を返し、もう一羽のガチョウの出どころを尋ねる。ベイカーは、大英博物館の近くのアルファ亭で、主人のウィンディゲイトが始めたガチョウ積立会に毎週少しずつ払い、クリスマスに受け取ったのだと答える。そしてスコットランド帽は自分には似合わないと礼を述べ、もったいぶった様子で帰っていく。

表現・文法のポイント

would it bore you to tell me
bore は「退屈させる」。would it bore you to 〜? は直訳すると「〜するのはあなたを退屈させるだろうか」で、「面倒でなければ〜してくれませんか」というへりくだった頼み方になる。ホームズは雑談を装って、肝心の問いを切り出している。
somewhat of a fowl fancier
fancier は「(動植物の)愛好家」で、fowl fancier は「家禽好き」。somewhat of a 〜 は「ちょっとした〜」と控えめに言う言い方だ。ホームズは鳥好きを名乗ることで、ガチョウの出どころを尋ねる不自然さを打ち消している。
we are to be found in the Museum itself
be to 不定詞は予定・義務のほか、「〜するのが常だ・〜できる」の意味でも使う。be to be found で「(たいてい)〜にいる」。itself は「〜そのもの」と強める語。昼は博物館で過ごす、学問好きの仲間たちだと分かる。
fitted neither to my years nor my gravity
neither A nor B は「AでもBでもない」。fitted to 〜 は「〜にふさわしい」。gravity はここで「重力」ではなく「威厳・重々しさ」。年齢にも威厳にも合わないと気取って述べ、スコットランド帽をかぶらずにすんだことに礼を言っている。

背景・時代

ガチョウ積立会(goose club)
毎週わずかな額を積み立てておき、クリスマスにガチョウを受け取るしくみ。酒場や商店が客のために開くことがあり、一度に大きな出費のできない人々が、祝いのごちそうを手に入れる方法だった。
大英博物館(the Museum)
ロンドンのブルームズベリーにある大きな博物館。ロンドンで the Museum と言えば、ふつうここを指した。館内の閲覧室には学者や物書きが通い、ベイカーの仲間たちも昼はそこで過ごしている。

全文の対訳

"There is your hat, then, and there your bird," said he. "By the way, would it bore you to tell me where you got the other one from? I am somewhat of a fowl fancier, and I have seldom seen a better grown goose."

「では、こちらがあなたの帽子、そしてこちらがあなたの鳥です」と彼は言った。「ところで、差し支えなければ、もう一羽のほうはどこで手に入れたのか、教えていただけませんか。私はちょっとした家禽好きでしてね、あれほどよく育ったガチョウはめったに見たことがないのです」

"Certainly, sir," said Baker, who had risen and tucked his newly gained property under his arm. "There are a few of us who frequent the Alpha Inn, near the Museum—we are to be found in the Museum itself during the day, you understand. This year our good host, Windigate by name, instituted a goose club, by which, on consideration of some few pence every week, we were each to receive a bird at Christmas. My pence were duly paid, and the rest is familiar to you. I am much indebted to you, sir, for a Scotch bonnet is fitted neither to my years nor my gravity." With a comical pomposity of manner he bowed solemnly to both of us and strode off upon his way.

「いいですとも」と、立ち上がって、新たに手に入れた品を小脇に抱えたベイカーは言った。「私たちのうち何人かは、大英博物館の近くのアルファ亭によく出入りしておりましてな——昼間は博物館そのものにおるわけですが、おわかりでしょう。今年は、ウィンディゲイトという名の気のいい主人がガチョウ積立会を始めましてな、毎週わずかなペンスを納めれば、クリスマスにめいめいが鳥を一羽受け取れることになっておったのです。私のペンスはきちんと納めてありましてな、あとはご存じのとおりです。本当にありがたく存じますよ、なにしろスコットランド帽は、私の年にも威厳にも似合いませんのでな」彼は滑稽なほどもったいぶった物腰で私たち二人に重々しく一礼すると、大股で帰っていった。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • fowl(ファウル)… 家禽(ニワトリ・ガチョウなど)・鳥難
  • fancier(ファンスィアー)… (動植物の)愛好家・飼育好き(fowl fancier で「家禽好き」)難
  • instituted(インスティテューティッド)… (制度・会などを)設けた・始めた(institute の過去形)難
  • duly(デューリー)… きちんと・期日どおりに・正式に難
  • indebted(インデッティッド)… 恩を受けて・借りがある難
  • bonnet(ボンネット)… ボンネット(あごひもで結ぶ婦人帽)・(英)車のボンネット難
  • pomposity(ポンポスィティー)… もったいぶった態度・尊大さ難
  • strode(ストロウド)… 大股で歩いた・闊歩した難

次の場面:凍てつく夜の街へ Out into the Frost

ヘンリー・ベイカーは代わりのガチョウを抱え、もったいぶった一礼を残して帰っていった。ベイカーが口にしたのは、大英博物館の近くのアルファ亭と、そこで開かれていたガチョウ積立会のことだ。扉が閉まると、ホームズはワトソンのほうへ向き直る。