Scene 30 · Notes

解説 場面 30「ホームズの賭け」

この場面の解説

商人は、ガチョウのことでさんざん問い詰められてうんざりしていると怒りをぶちまける。ホームズはほかの問い合わせとは無関係だと言い、自分が食べた鳥は田舎育ちだと 5 ポンド賭けているのだと持ちかける。商人は町育ちだと言い張り、二人は言い争いになる。

表現・文法のポイント

You'd be as warm, maybe, if you were as pestered as I am
You'd は You would の短縮形で、if you were 〜 と合わせた仮定法過去。「もしあんたが俺と同じくらい困らされていたら、同じくらい熱くなるだろう」。warm はここでは「暖かい」ではなく「かっとなった、むきになった」の意味。
the bet is off
off はここで「取りやめになって、中止で」。The deal is off(取引はなしだ)のように使う。ホームズは賭けをしている体を装い、教えてくれないなら賭けが成り立たないだけだ、と気のない様子を見せて相手を釣っている。
back my opinion
back は動詞で「支持する、後押しする」。そこから、自分の意見にお金を賭ける、という意味にもなる。続く I have a fiver on it の on も「〜に賭けて」の on で、fiver は 5 ポンド(札)を指すくだけた言い方だ。
It's nothing of the kind.
nothing of the kind は「まったくそんなものではない」と強く打ち消す言い方。相手の「町育ちだ」をそのまま否定している。このあと I say it is./I don't believe it. と、短い言い合いが続く。

背景・時代

5 ポンド(fiver)
fiver は 5 ポンドのくだけた呼び方。当時の庶民にとってはかなりの大金だ。ガチョウ 一羽の産地をめぐる賭けとしては大きすぎるほどで、ホームズはわざと額を張って商人の意地をあおっている。

全文の対訳

"Warm! You'd be as warm, maybe, if you were as pestered as I am. When I pay good money for a good article there should be an end of the business; but it's 'Where are the geese?' and 'Who did you sell the geese to?' and 'What will you take for the geese?' One would think they were the only geese in the world, to hear the fuss that is made over them."

「むきになる、だと!あんただって、俺くらいしつこく付きまとわれりゃ、同じくらい熱くなるだろうよ。いい品物にまっとうな金を払ったら、取引はそれで終わりのはずだろうが、それが『ガチョウはどこだ?』だの『ガチョウを誰に売った?』だの『ガチョウをいくらで譲る?』だのと来やがる。あの騒ぎようを聞いてりゃ、世の中にガチョウはあれしかいないのかと思っちまうよ」

"Well, I have no connection with any other people who have been making inquiries," said Holmes carelessly. "If you won't tell us the bet is off, that is all. But I'm always ready to back my opinion on a matter of fowls, and I have a fiver on it that the bird I ate is country bred."

「まあ、ほかに問い合わせてきた人たちと私は、なんの関係もありませんがね」とホームズは気のない様子で言った。「教えてくれないのなら賭けはなし、それだけのことです。ですが、鳥のことなら私はいつでも自分の見立てに賭けますよ。私が食べた鳥は田舎育ちだというほうに、5 ポンド賭けているのでね」

"Well, then, you've lost your fiver, for it's town bred," snapped the salesman.

「なら、あんたの 5 ポンドは負けだ。あれは町育ちだからな」と商人はかみつくように言った。

"It's nothing of the kind."

「そんなはずはありませんよ」

"I say it is."

「町育ちだと言ってるだろうが」

"I don't believe it."

「信じませんね」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • pestered(ペスタード)… しつこく付きまとわれた・うるさく悩まされた難
  • fowls(ファウルズ)… 鳥・家禽(fowl の複数形。ニワトリやガチョウなど)難
  • fiver(ファイヴァー)… 5 ポンド(札)(くだけた言い方)難
  • connection(コネクション)… 関連・つながり・接続
  • carelessly(ケアレスリー)… 不注意に・ぞんざいに
  • inquiries(インクワイアリーズ)… 問い合わせ・調査(inquiry の複数形)
  • salesman(セイルズマン)… 商人・売り手・販売員
  • article(アーティクル)… 品物・記事

次の場面:帳簿を持ってこい Bring Me the Books

仕入れ先を聞かれてうんざりしている商人に、ホームズは、自分が食べた鳥は田舎育ちだと 5 ポンド賭けているのだと持ちかける。商人は町育ちだと言い張って一歩も引かない。そんなはずはない、信じない、と言い合ううちに、二人はいよいよ引っ込みがつかなくなっていく。