Scene 40 · Notes

解説 場面 40「ガチョウの行き先」

この場面の解説

鳥の行き先を尋ねるライダーに、ホームズは、その鳥はここへ来て、死んでから青い卵を産んだのだと、とぼけてみせる。ホームズが金庫から青いガーネットを取り出して掲げると、ライダーはよろめき、こわばった顔で、それを自分の物だと言うべきか否か決めかねて立ちつくす。

表現・文法のポイント

It laid an egg after it was dead
lay an egg は「卵を産む」で、laid は lay の過去形(lie「横たわる」の過去形 lay と混同しやすい)。死んだ鳥が卵を産むはずはない。餌袋から出てきた宝石を卵に見立てた、ホームズのわざととぼけた冗談だ。
the bonniest, brightest little blue egg that ever was seen
bonny は主にスコットランドや北イングランドで「美しい・かわいらしい」。最上級を二つ重ね、that ever was seen「これまでに見られたうちで」と続けて、「世にも見事な」と大げさにほめている。冗談の続きの言い回しだ。
uncertain whether to claim or to disown it
whether to A or to B は「A すべきか B すべきか」。claim は「自分の物だと名乗り出る」、disown は「自分の物ではないと言う」。正反対の二つの動詞を並べて、追いつめられた男の迷いを表している。

背景・時代

炉棚(mantelpiece)
暖炉の上や周りに取りつけた飾り棚。時計や手紙、パイプなどを置く場所で、暖炉とともに当時の居間の中心だった。ここでは、よろめいた客がとっさにつかまる支えになっている。

全文の対訳

Ryder quivered with emotion. "Oh, sir," he cried, "can you tell me where it went to?"

ライダーは気が高ぶって身を震わせた。「ああ、旦那」と彼は叫んだ。「その鳥がどこへ行ったか、ご存じなんですか?」

"It came here."

「ここへ来たのですよ」

"Here?"

「ここへ?」

"Yes, and a most remarkable bird it proved. I don't wonder that you should take an interest in it. It laid an egg after it was dead—the bonniest, brightest little blue egg that ever was seen. I have it here in my museum."

「ええ、それがじつに驚くべき鳥でしてね。あなたが気にかけるのも無理はない。なにしろ、死んでから卵を産んだのですからね——世にも美しい、きらきら輝く、小さな青い卵を。その卵は、ここの私のささやかな博物館にしまってありますよ」

Our visitor staggered to his feet and clutched the mantelpiece with his right hand. Holmes unlocked his strong-box and held up the blue carbuncle, which shone out like a star, with a cold, brilliant, many-pointed radiance. Ryder stood glaring with a drawn face, uncertain whether to claim or to disown it.

客はよろめきながら立ち上がり、右手で炉棚をつかんだ。ホームズが金庫の鍵を開けて青いガーネットを掲げると、それは星のように、冷たく、まばゆく、幾筋もの光を放って輝いた。ライダーはこわばった顔でそれをにらみつけたまま、自分の物だと言うべきか、知らないと言うべきか決めかねて、立ちつくしていた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • bonniest(ボニエスト)… 最も美しい・とびきりかわいい(bonny の最上級)難
  • mantelpiece(マントルピース)… 炉棚(暖炉の上の飾り棚)難
  • strong-box(ストロングボックス)… 金庫・貴重品箱難
  • carbuncle(カーバンクル)… ガーネット(丸く磨いた宝石)・吹き出物難
  • many-pointed(メニーポインティッド)… 幾筋もの・多くの先端を持つ難
  • radiance(レイディアンス)… 輝き・光難
  • disown(ディスオウン)… 自分の物ではないと言う・縁を切る難
  • remarkable(リマーカブル)… 注目すべき・著しい

次の場面:暖炉の前で By the Fire

小男が探していたガチョウは、思いがけない形でこの居間に届いていたらしい。ホームズの言葉に、小男はよろめくように立ち上がり、青ざめたまま立ちつくしている。暖炉の火だけがぱちぱちと鳴る中、ホームズは小男の顔をじっと見つめ、静かに口を開く。