Scene 41 · Notes

解説 場面 41「暖炉の前で」

この場面の解説

ホームズはライダーに、もう観念しろと静かに告げる。倒れかけた彼をワトソンが椅子に戻してブランデーを飲ませると、ホームズは証拠はほぼそろっていると言い、モーカー伯爵夫人の青い石のことを聞いていたのかと問う。ライダーは、キャサリン・キューザックから聞いたとかすれた声で答える。

表現・文法のポイント

The game's up
game's は game is の短縮。The game is up は「もうおしまいだ・たくらみはばれた」という決まり文句。game は「勝負・たくらみ」、up は「終わって」。悪事が見破られた相手に、観念を迫るときに使う。
He's not got blood enough to go in for felony with impunity.
He's not got は He has not got(=He doesn't have)。blood は「気概・度胸」。go in for 〜 は「〜に手を出す」、with impunity は「罰を受けずに・平然と」。重罪を犯して平気でいられる器ではない、という見下した言い方だ。
What a shrimp it is, to be sure!
shrimp は「小エビ」から転じて「ちび・取るに足りない小男」。人を it で受けて、さらに見下している。to be sure は「確かに・まったく」と感想を強める挿入句。ホームズの冷ややかな軽蔑がにじむ一言だ。
that little may as well be cleared up
may as well 〜 は「〜したほうがよい・〜してもかまわない」と控えめに勧める言い方。that little は前の文の little(わずかなこと)を受けて「そのわずかな部分」。clear up は「(疑問などを)はっきりさせる」。

背景・時代

気付けのブランデー(brandy)
当時は、気を失いかけた人や気分の悪くなった人に、気付けとして少量のブランデーを飲ませることがよくあった。医者であるワトソンが、ホームズに言われて客に飲ませている。

全文の対訳

"The game's up, Ryder," said Holmes quietly. "Hold up, man, or you'll be into the fire! Give him an arm back into his chair, Watson. He's not got blood enough to go in for felony with impunity. Give him a dash of brandy. So! Now he looks a little more human. What a shrimp it is, to be sure!"

「もう観念したまえ、ライダー」とホームズは静かに言った。「しっかりしたまえ、きみ、火の中に倒れ込むぞ!ワトソン、腕を貸して椅子に戻してやってくれ。この男には、重罪に手を染めて平然としていられるほどの度胸はないのだ。ブランデーを少し飲ませてやりたまえ。よし!これで少しは人間らしい顔になった。それにしても、まったくちっぽけな男だ!」

For a moment he had staggered and nearly fallen, but the brandy brought a tinge of colour into his cheeks, and he sat staring with frightened eyes at his accuser.

一瞬、彼はよろめいて倒れかけたが、ブランデーで頬にいくらか赤みが戻り、自分を責める相手を、おびえた目で見つめて座っていた。

"I have almost every link in my hands, and all the proofs which I could possibly need, so there is little which you need tell me. Still, that little may as well be cleared up to make the case complete. You had heard, Ryder, of this blue stone of the Countess of Morcar's?"

「鎖の輪はほとんどすべてこの手にあるし、必要な証拠もすっかりそろっているから、きみから聞くことはほとんどない。それでも、事件をすっかり仕上げるために、そのわずかなところもはっきりさせておいたほうがいいだろう。ライダー、きみはモーカー伯爵夫人のこの青い石のことを、耳にしていたのだね?」

"It was Catherine Cusack who told me of it," said he in a crackling voice.

「教えてくれたのは、キャサリン・キューザックです」と、彼はかすれた声で言った。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • felony(フェロニー)… 重罪難
  • impunity(インピューニティー)… (with impunity で)罰を受けずに・平然と難
  • tinge(ティンジ)… かすかな色合い・気味難
  • accuser(アキューザー)… 責める人・告発者難
  • countess(カウンテス)… 伯爵夫人・女伯爵難
  • crackling(クラックリング)… ぱちぱちと音を立てる難
  • frightened(フライトゥンド)… おびえた
  • staggered(スタガード)… (be staggered で)仰天した・呆然とした・よろめいた・ふらついた

次の場面:ホテルの部屋 My Lady's Room

倒れかけた小男は、ワトソンの手で椅子に戻され、ブランデーを飲まされる。頬にいくらか赤みが戻ったものの、小男はおびえた目でホームズを見つめたまま座っている。ホームズは落ち着いた声で問いを重ね、小男はかすれた声でそれに短く答える。