Scene 43 · Notes

解説 場面 43「敷物の上で」

この場面の解説

ライダーは敷物に身を投げ出してホームズのひざにすがり、両親のためにも許してほしい、二度としないから裁判にはしないでくれと泣きつく。ホームズは椅子に戻れと厳しく命じ、身に覚えのない罪で被告席に立たされたホーナーのことは考えもしなかったではないかと責める。

表現・文法のポイント

For God's sake, have mercy!
for God's sake は「お願いだから・後生だから」と必死に頼むときの言い方。have mercy は「慈悲をかける・情けをかける」。同じ場面の終わりの For Christ's sake も同じ意味で、さらに切羽つまった懇願になっている。
I never went wrong before!
go wrong は人について言うと「道を踏み外す・悪の道に入る」。物事について「うまくいかない」の意味でもよく使う。never 〜 before で「これまで一度も〜したことがない」と、初めての過ちだと訴えている。
It is very well to cringe and crawl now
It is very well to 〜, but … は「〜するのは結構だが…」と、皮肉をこめて相手の態度を退ける言い方。cringe は「縮こまる・へつらう」、crawl は「這う・へいこらする」。同じ cr- の音で始まる二語を重ねている。
you thought little enough of this poor Horner in the dock
think little of 〜 は「〜を軽んじる・何とも思わない」。enough を添えて「ろくに考えもしなかった」と強めている。in the dock は「被告席に立って」、つまり裁判にかけられているということ。

背景・時代

被告席(the dock)
イギリスの刑事法廷で、被告人が立たされる、柵で囲まれた場所。in the dock で「裁判にかけられて」という意味の言い回しにもなる。

全文の対訳

Ryder threw himself down suddenly upon the rug and clutched at my companion's knees. "For God's sake, have mercy!" he shrieked. "Think of my father! Of my mother! It would break their hearts. I never went wrong before! I never will again. I swear it. I'll swear it on a Bible. Oh, don't bring it into court! For Christ's sake, don't!"

ライダーは突然、敷物の上に身を投げ出し、わが友のひざにすがりついた。「お願いです、どうかお慈悲を!」と彼は金切り声を上げた。「父のことを考えてください!母のことも!二人とも、胸がつぶれてしまいます。これまで悪いことなんて、一度もしたことがないんです!もう二度としません。誓います。聖書にかけて誓います。ああ、どうか裁判にはしないでください!後生ですから、やめてください!」

"Get back into your chair!" said Holmes sternly. "It is very well to cringe and crawl now, but you thought little enough of this poor Horner in the dock for a crime of which he knew nothing."

「椅子に戻りたまえ!」とホームズは厳しく言った。「今になって縮こまり、這いつくばるのは結構だが、身に覚えのない罪で被告席に立たされた気の毒なホーナーのことなど、きみはろくに考えもしなかったではないか」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • christ's(クライスツ)… (for Christ's sake で)後生だから・頼むから・キリストの難
  • cringe(クリンジ)… (恐れて)縮こまる・へつらう難
  • companion's(カンパニオンズ)… 相棒の・連れの
  • clutched(クラッチト)… (clutch at で)つかみかかった・ぎゅっとつかんだ
  • shrieked(シュリークト)… 金切り声で叫んだ
  • sternly(スターンリー)… 厳しく・いかめしく
  • god's(ゴッズ)… (for God's sake で)お願いだから・後生だから・神の
  • mercy(マースィー)… 慈悲・情け

次の場面:本当のことを The Whole Truth

居間の空気は張りつめたままだ。ホームズの厳しい声に、小男は敷物の上から身を起こし、ふたたび椅子に戻る。肩を落とした小男は、うろたえながら、なんとか次の言葉を探している。ホームズは冷ややかな目で、その様子をじっと見すえている。