Scene 46 · Notes

解説 場面 46「キルバーンの友人」

この場面の解説

ライダーには、ペントンヴィルの刑務所を出たばかりのモーズリーという友人がいた。弱みを握っているので裏切られる心配はなく、彼なら石を金に換える方法を知っている。だが、キルバーンまで石を持ち歩けば途中で捕まるかもしれない。塀にもたれてガチョウを眺めていたとき、ライダーの頭にある考えがひらめく。

表現・文法のポイント

went to the bad
go to the bad は「堕落する、悪の道に入る」という古い英国の言い方。the bad は「悪い状態」。モーズリーが身を持ち崩して犯罪者になったことを、遠回しに言っている。
serving his time
serve one's time は「刑期を務める」。time は「刑期」の意味で使われている。has just been serving は、つい最近まで服役していた、つまり出所したばかりだという含みになる。
get rid of what they stole
get rid of 〜 は「〜を処分する、厄介払いする」。泥棒にとって盗品は持っているだけで危ないので、どう手放して金にするかが肝心だ。what they stole は「彼らが盗んだもの」。
take him into my confidence
take 〜 into one's confidence は「〜に秘密を打ち明ける」。confidence は「信頼」で、相手を信頼の内側に招き入れる、という発想の言い方だ。

背景・時代

ペントンヴィル(Pentonville)
ロンドン北部にある刑務所の名。囚人を一人ずつ独房に入れる方式で知られた。ライダーの友人モーズリーは、ここで刑期を務めて出てきたばかりだ。

全文の対訳

"I had a friend once called Maudsley, who went to the bad, and has just been serving his time in Pentonville. One day he had met me, and fell into talk about the ways of thieves, and how they could get rid of what they stole. I knew that he would be true to me, for I knew one or two things about him; so I made up my mind to go right on to Kilburn, where he lived, and take him into my confidence. He would show me how to turn the stone into money. But how to get to him in safety? I thought of the agonies I had gone through in coming from the hotel. I might at any moment be seized and searched, and there would be the stone in my waistcoat pocket. I was leaning against the wall at the time and looking at the geese which were waddling about round my feet, and suddenly an idea came into my head which showed me how I could beat the best detective that ever lived.

「以前、モーズリーという友人がいました。道を踏み外して、ペントンヴィルで刑期を務めて出てきたばかりの男です。ある日その男に会ったとき、泥棒のやり口や、盗んだ物をどうやって処分するかという話になりました。私は彼の弱みを一つ二つ知っていましたから、裏切られる心配はありませんでした。そこで、彼の住むキルバーンまでまっすぐ行って、秘密を打ち明けようと心を決めたのです。彼なら、石を金に換える方法を教えてくれるはずでした。けれども、どうすれば無事に彼のところまでたどり着けるでしょう?ホテルからここへ来るまでに味わった、生きた心地もしない苦しみが思い出されました。いつ捕まって身体検査をされるか分かりません。そうなれば、チョッキのポケットから石が出てきてしまいます。そのとき私は塀にもたれて、足もとをよちよち歩き回るガチョウを眺めていましたが、ふと、この世でいちばんの名探偵でも出し抜ける方法が頭に浮かんだのです。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • agonies(アゴニーズ)… 苦しみ・苦悶(agony の複数形)難
  • waddling(ウォドリング)… よちよち歩いている難
  • confidence(コンフィデンス)… 信頼・自信・(take 〜 into one's confidence で)〜に秘密を打ち明ける
  • waistcoat(ウェイストコウト)… チョッキ・ベスト
  • detective(ディテクティヴ)… 探偵・刑事
  • serving(サーヴィング)… (刑期を)務めている・仕えている・(料理を)出している
  • thieves(スィーヴズ)… 泥棒たち(thief の複数形)
  • leaning(リーニング)… もたれている・傾いている

次の場面:裏庭のガチョウ Geese in the Yard

小男の話は、キルバーンに住む古い知り合いのことに移る。その男のもとへ行こうと決めたものの、彼にはまだ気がかりなことがある。姉の家の裏庭で、塀にもたれてガチョウを眺めていた小男の頭に、ふと、ある考えがひらめく。