Scene 50 · Notes

解説 場面 50「商人のもとへ」

この場面の解説

ライダーはブレッキンリッジのもとへ駆けつけたが、鳥はすでにまとめて売られ、行き先は教えてもらえなかった。姉には正気を疑われ、石の富には指一本触れないまま泥棒の烙印だけが残った。告白を終えた彼は、両手に顔をうずめて泣き崩れる。

表現・文法のポイント

as hard as my feet would carry me
as fast as one's legs would carry one と同じ型で、「足の続くかぎり全力で」。would は過去から見た可能性で、「足が運んでくれるかぎり」という意味になる。必死に走った様子を表す決まった言い方だ。
not one word would he tell me
he would not tell me one word の否定語句 not one word を文頭に出した倒置。否定を前に出すと、助動詞と主語の順序が入れ替わる。「一言たりとも教えようとしなかった」と強調している。
a branded thief
brand は家畜などに焼きごてで印をつけること。branded thief は「泥棒の烙印を押された者」で、一生消えない汚名を背負ったという意味になる。
the wealth for which I sold my character
for which は「そのために」で、関係代名詞 which が前置詞 for といっしょに前に出た形。character はここでは「評判・信用」。自分の名誉と引き換えにした富、ということだ。

全文の対訳

"Well, then, of course I saw it all, and I ran off as hard as my feet would carry me to this man Breckinridge; but he had sold the lot at once, and not one word would he tell me as to where they had gone. You heard him yourselves to-night. Well, he has always answered me like that. My sister thinks that I am going mad. Sometimes I think that I am myself. And now—and now I am myself a branded thief, without ever having touched the wealth for which I sold my character. God help me! God help me!" He burst into convulsive sobbing, with his face buried in his hands.

「それで、もちろん私は何もかも悟って、あのブレッキンリッジという男のところへ全力で駆けつけました。ところが、あの男はもう全部まとめて売ってしまっていて、どこへ行ったのか一言も教えてくれないのです。今夜、あなた方もご自分の耳でお聞きになったとおりです。ええ、あの男はいつもあんなふうに答えるんです。姉は、私の気が変になりかけていると思っています。自分でもときどき、そうなのではないかと思います。そして今――今の私は、泥棒の烙印を押された身です。自分の名誉を売り渡してまで手にしようとした富には、指一本触れていないというのに。ああ、神様、お助けください!神様、お助けください!」彼は両手に顔をうずめ、身を震わせてむせび泣いた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • branded(ブランディッド)… 烙印を押された・汚名を着せられた難
  • convulsive(コンヴァルスィヴ)… けいれんするような・発作的な難
  • character(キャラクター)… 性格・人格・登場人物・文字・評判・信用・名誉
  • sobbing(ソビング)… むせび泣き・すすり泣いている
  • wealth(ウェルス)… 富・財産
  • buried(ベリッド)… 埋もれた
  • thief(スィーフ)… 泥棒
  • burst(バースト)… 急に〜しだした(burst out)・破裂する・(感情の)爆発・ほとばしり(a burst of anger で「怒りの爆発」)

次の場面:長い沈黙 A Long Silence

小男の長い話がようやく終わる。彼は両手に顔をうずめ、身を震わせてむせび泣いている。居間には長い沈黙が続き、聞こえるのは荒い息づかいと、ホームズが指でテーブルの縁を規則正しくたたく音だけだ。ワトソンは黙って友の顔をうかがう。