Scene 27 · Notes

解説 場面 27「白紙委任」

この場面の解説

話は費用に移り、国王は写真のためなら王国の州を一つ差し出してもよいと言う。そして金貨と紙幣で千ポンドを置き、ホームズは手帳に受取書を書いて渡す。

表現・文法のポイント

You have carte blanche.
carte blanche はフランス語で「白紙」。署名だけした白紙を渡し、条件は相手に書かせることから「全権委任・自由裁量」の意味になった。英語でもそのまま使う。
as to money
as to ~ は「~については」と話題を切り出す言い方。Then, as to money? と文の形にせず、話題だけを差し出して相手に続きを促している。会話らしい省略だ。
three hundred pounds in gold and seven hundred in notes
in gold は「金貨で」、in notes は「紙幣で」。in は支払いの形を表す。seven hundred の後には pounds が省かれている。合わせて千ポンドという大金だ。

背景・時代

千ポンドの重み
当時の千ポンドは、中流家庭が何年も暮らせるほどの大金だった。ソブリン金貨三百枚も入った袋はずしりと重い。気前のよさが、国王の切羽詰まった様子をよく表している。
セーム革の袋
chamois leather はカモシカの一種シャモアの革、または同じように柔らかくなめした革のこと。柔らかく丈夫で、金貨や貴重品を入れる袋によく使われた。

全文の対訳

"Then, as to money?"

「では、費用のほうは?」

"You have carte blanche."

「いくら使っても構わない」

"Absolutely?"

「本当にいくらでも?」

"I tell you that I would give one of the provinces of my kingdom to have that photograph."

「あの写真が手に入るなら、王国の州を一つ差し出してもよいと言っているのだ」

"And for present expenses?"

「当座の費用はいかがでしょう」

The King took a heavy chamois leather bag from under his cloak and laid it on the table.

国王はマントの下から重いセーム革の袋を取り出し、テーブルの上に置いた。

"There are three hundred pounds in gold and seven hundred in notes," he said.

「金貨で三百ポンド、紙幣で七百ポンドある」と彼は言った。

Holmes scribbled a receipt upon a sheet of his note-book and handed it to him.

ホームズは手帳の一枚に受取書を走り書きして、国王に手渡した。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • carte(カート)… (carte blanche で)白紙委任・全権難
  • chamois(シャミー)… セーム革(シャモアの柔らかい革)・シャモア難
  • provinces(プロヴィンスィズ)… 州・地方(複数)
  • scribbled(スクリブルド)… 走り書きした(scribble の過去形)
  • expenses(イクスペンスィズ)… 経費・費用(複数)
  • kingdom(キングダム)… 王国
  • receipt(リスィート)… 領収書・受け取り
  • cloak(クロウク)… マント・外套

次の場面:夜の別れ Good-night

ホームズは最後にアイリーン・アドラーの住所を尋ね、セント・ジョンズ・ウッドのブライオニー荘だと聞いて書き留める。写真の大きさも確かめると、近いうちによい知らせを届けると約束して国王を見送る。王家の馬車が通りを遠ざかるなか、ホームズは明日の午後三時にまた来てほしいとワトソンに頼む。