Scene 28 · Notes

解説 場面 28「夜の別れ」

この場面の解説

ホームズはアドラーの住所がセント・ジョンズ・ウッドのブライオニー荘だと聞いて書き留め、写真の大きさも確かめる。国王を見送ると、ワトソンに明日の午後三時に来るよう頼む。

表現・文法のポイント

Was the photograph a cabinet?
cabinet は cabinet photograph(キャビネ判写真)のこと。名刺判より大きく、隠すにも持ち運ぶにも場所を取る。大きさを聞くのは、どこに隠せるかを考えるための質問だ。
If you will be good enough to call
be good enough to ~ は「親切にも~してくれる」で、丁寧な頼み方になる。if節の will は未来ではなく「~してくれるなら」という意志を表す。call は「訪問する」の意味だ。
to chat this little matter over
chat over は talk over と同じく「~について話し合う」。目的語が chat と over の間に入っている。国王の重大事を this little matter(ちょっとした件)と呼ぶ、ホームズらしい余裕が出ている。

背景・時代

キャビネ判写真
台紙に貼った写真で、1860年代から広く流行した。名刺サイズのカルト・ド・ヴィジットより一回り大きい。当時は写真館で撮った肖像写真を贈り合う習慣があった。
ブルーム型馬車
brougham は一頭立てが多い、屋根付きの小型四輪馬車。上流の人々が街なかの移動に好んで使った。ここでは王家の馬車として登場している。

全文の対訳

"And Mademoiselle's address?" he asked.

「それで、マドモアゼルのお住まいは?」と彼は尋ねた。

"Is Briony Lodge, Serpentine Avenue, St. John's Wood."

「セント・ジョンズ・ウッドのサーペンタイン通り、ブライオニー荘だ」

Holmes took a note of it. "One other question," said he. "Was the photograph a cabinet?"

ホームズはそれを書き留めた。「もう一つ質問があります」と彼は言った。「その写真はキャビネ判でしたか」

"It was."

「そうだ」

"Then, good-night, your Majesty, and I trust that we shall soon have some good news for you. And good-night, Watson," he added, as the wheels of the royal brougham rolled down the street. "If you will be good enough to call to-morrow afternoon at three o'clock I should like to chat this little matter over with you."

「では、おやすみなさいませ、陛下。近いうちに、何かよい知らせをお届けできるものと存じます。それから、おやすみ、ワトソン」と、王家の箱馬車の車輪が通りを遠ざかっていくなか、彼は付け加えた。「明日の午後三時に来てもらえるとありがたいね。このちょっとした件について、きみと話をしておきたいんだ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • mademoiselle's(マドモワゼルズ)… お嬢さんの(mademoiselle=フランス語で未婚女性への敬称)難
  • brougham(ブルーアム)… ブルーム型馬車(一頭または二頭立ての箱型四輪馬車)難
  • cabinet(キャビネット)… キャビネ判(写真の大きさ)・戸棚・内閣
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • avenue(アヴェニュー)… 大通り・〜街(通りの名)
  • wheels(ウィールズ)… 車輪(複数)
  • lodge(ロッジ)… 邸宅・小屋(屋敷名として Briony Lodge)・番小屋
  • royal(ロイアル)… 王室の・王の

次は第 2 章「煙の合図」

翌日の午後、ワトソンはベイカー街でホームズの帰りを待つ。朝から出かけていたホームズは、変装して写真の持ち主の屋敷を探っていた。ところが思いがけない出来事で計画が狂い、夕方、ホームズはワトソンに奇妙な役目を頼む。