Scene 56 · Notes

解説 場面 56「国王の到着」

この場面の解説

翌朝、ベイカー街で朝食中の二人のもとへボヘミア国王が駆け込んでくる。写真はまだだが見込みはあると聞き、三人は国王の箱馬車で出発する。

表現・文法のポイント

we were engaged upon our toast and coffee
be engaged upon 〜 は「〜に取りかかっている・従事している」という硬い言い方。ありふれた朝食にわざと大げさな表現を使っていて、ワトソンらしいユーモアがある。
grasping Sherlock Holmes by either shoulder
grasp 人 by 〜 は「人の〜をつかむ」。either shoulder は「どちらの肩も」、つまり両肩のこと。either は「どちらか一方」だけでなく「両方の」の意味にもなる。
my brougham is waiting
brougham(ブルーアム)は一頭立ての箱型四輪馬車。自家用の馬車を外に待たせているので、辻馬車(cab)を拾う必要はないということ。
Then that will simplify matters
simplify matters は「事を簡単にする」で、「それなら話が早い」という意味になる。matters は「事態・状況」を漠然と指す複数形で、make matters worse(事態を悪化させる)のような形でもよく使う。

背景・時代

ブルーアム
十九世紀に考案された、屋根付きで御者席が前に張り出した小型の箱馬車。裕福な家の自家用車にあたり、辻馬車とは格が違う。国王がお忍びでも身分にふさわしい乗り物を使っていることが分かる。

全文の対訳

I slept at Baker Street that night, and we were engaged upon our toast and coffee in the morning when the King of Bohemia rushed into the room.

その夜、私はベイカー街に泊まり、翌朝、二人でトーストとコーヒーの朝食をとっていると、ボヘミア国王が部屋に駆け込んできた。

"You have really got it!" he cried, grasping Sherlock Holmes by either shoulder and looking eagerly into his face.

「本当に手に入れたのだな!」と国王は叫び、シャーロック・ホームズの両肩をつかんで、その顔を食い入るようにのぞき込んだ。

"Not yet."

「まだです」

"But you have hopes?"

「だが、見込みはあるのだな?」

"I have hopes."

「見込みはあります」

"Then, come. I am all impatience to be gone."

「では、行こう。私はもう待ちきれないのだ」

"We must have a cab."

「辻馬車を呼ばなくてはなりません」

"No, my brougham is waiting."

「いや、私の箱馬車を待たせてある」

"Then that will simplify matters." We descended and started off once more for Briony Lodge.

「それなら話が早いですね」私たちは階下へ降り、ふたたびブライオニー荘へ向けて出発した。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • brougham(ブルーアム)… ブルーム型馬車(一頭または二頭立ての箱型四輪馬車)難
  • impatience(インペイシェンス)… 待ちきれなさ・いらだち・性急さ
  • descended(ディセンディッド)… 降りた・下った
  • grasping(グラースピング)… つかんでいる・握っている・理解している
  • simplify(シンプリファイ)… 簡単にする・単純化する
  • engaged(インゲイジド)… 雇われた・予約された・婚約した・忙しい
  • eagerly(イーガリー)… 熱心に
  • rushed(ラッシュト)… 駆けつけた・急いだ

次の場面:結婚の知らせ News of the Marriage

翌朝、ベイカー街に駆けつけた国王とともに、ホームズとワトソンは箱馬車でふたたびブライオニー荘へ向かう。その車中でホームズは、アイリーン・アドラーが昨日結婚したことを告げる。驚く国王に、彼女が夫を愛しているのなら、それはむしろ陛下にとって好都合なのだと、ホームズは淡々と説いてみせる。