Scene 62 · Notes

解説 場面 62「国王の賛嘆」

この場面の解説

手紙を読み終えた国王はアイリーンを絶賛し、身分違いを惜しむ。ホームズは、彼女は陛下とは格が違うと冷ややかに応じるが、国王は彼女の約束は確かだとして、これ以上の成功はないと言い切る。

表現・文法のポイント

on a very different level to your Majesty
国王は on my level(身分が同じ)と言ったが、ホームズは同じ level を「人物の格」の意味で言い返している。痛烈な皮肉である。different to はイギリス英語で、アメリカ英語では different from が普通。
nothing could be more successful
否定語+比較級で「これ以上…なものはない」という最上級の意味になる。直前の On the contrary(それどころか)で、ホームズの「うまく片づけられなかった」という詫びを打ち消している。
her word is inviolate
word はここでは「約束」の意味で、her word は「彼女が約束したこと」。inviolate は「破られることのない」。国王は、手紙で写真を使わないと書いた以上、彼女は必ず守ると信じている。
as safe as if it were in the fire
as safe as if 〜 で「まるで〜であるかのように安全だ」。were は仮定法過去。「暖炉で燃やしてしまったのと同じくらい安全だ」、つまり二度と悪用される心配はない、という意味である。

背景・時代

ホームズの冷ややかさ
かつての恋人を身分違いとして捨て、写真を取り戻すことしか考えない国王に、ホームズは好意を持っていない。アイリーンをほめながらも身分の話をする国王に、皮肉で応じるのはそのためである。

全文の対訳

"What a woman—oh, what a woman!" cried the King of Bohemia, when we had all three read this epistle. "Did I not tell you how quick and resolute she was? Would she not have made an admirable queen? Is it not a pity that she was not on my level?"

「なんという女だ――ああ、なんという女だろう!」三人がこの手紙を読み終えると、ボヘミア国王はそう叫んだ。「あの女がどれほど機敏で思い切りがよいか、言っておいたではないか。見事な王妃になったとは思わぬか。私と同じ格の生まれでなかったのは、まったく惜しいことではないか」

"From what I have seen of the lady, she seems, indeed, to be on a very different level to your Majesty," said Holmes coldly. "I am sorry that I have not been able to bring your Majesty's business to a more successful conclusion."

「私が見たかぎりでは、あの方はたしかに、陛下とはまるで格が違うようです」とホームズは冷ややかに言った。「陛下のご依頼を、もっとうまく決着させられず、申し訳ありません」

"On the contrary, my dear sir," cried the King; "nothing could be more successful. I know that her word is inviolate. The photograph is now as safe as if it were in the fire."

「とんでもない、きみ」と国王は叫んだ。「これ以上の成功はありえぬ。あの女が一度口にしたことを決して破らないのは、よく分かっているのだ。もうあの写真は、火にくべてしまったのと同じくらい安全だ」

"I am glad to hear your Majesty say so."

「陛下にそうおっしゃっていただけて、何よりです」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • epistle(イピスル)… 手紙・書簡(改まった・おどけた言い方)難
  • inviolate(インヴァイオレット)… 破られることのない・侵されない難
  • conclusion(カンクルージョン)… 決着・結末・結論
  • admirable(アドミラブル)… すばらしい・見事な
  • majesty's(マジェスティズ)… 陛下の(your Majesty's で「陛下の」)
  • resolute(レゾルート)… 断固とした・意志の固い
  • contrary(コントラリー)… 反対・逆。on the contrary で「それどころか」
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳

次の場面:望みの報酬 The Reward

写真はもう安全だと喜ぶ国王は、ホームズに深く感謝し、どのように報いればよいかと尋ねる。そして、指から抜いたエメラルドの蛇の指輪を手のひらにのせて差し出す。だがホームズは、陛下はそれよりもずっと価値のあるものをお持ちだと答え、思いもよらない品の名を挙げて国王を驚かせる。