Scene 01 · Notes

解説 場面 1「置き忘れの杖」

この場面の解説

朝食の卓についたホームズを背に、ワトソンは前夜の客が忘れた杖を手に取る。刻印や形を調べていると、背を向けたホームズから不意に問いかけられる。

表現・文法のポイント

save upon those not infrequent occasions
saveはここでは救うという動詞ではなく「〜を除いて」。not infrequentは「まれではない」、つまり時々あることを控えめに述べる。徹夜した場合を、普段の朝寝坊の習慣から除いている。
what do you make of it?
ホームズがワトソンに、杖を見てどう判断するか尋ねる言い方。make ofは材料から何かを作るという意味ではなく、目の前の物をどう理解し、評価するかを表す。

全文の対訳

Mr. Sherlock Holmes, who was usually very late in the mornings, save upon those not infrequent occasions when he was up all night, was seated at the breakfast table. I stood upon the hearth-rug and picked up the stick which our visitor had left behind him the night before. It was a fine, thick piece of wood, bulbous-headed, of the sort which is known as a "Penang lawyer." Just under the head was a broad silver band nearly an inch across. "To James Mortimer, M.R.C.S., from his friends of the C.C.H.," was engraved upon it, with the date "1884." It was just such a stick as the old-fashioned family practitioner used to carry—dignified, solid, and reassuring.

シャーロック・ホームズ氏は、徹夜することも珍しくなかったが、そうした時以外はたいてい朝が遅く、その朝も朝食の卓についていた。私は暖炉前の敷物の上に立ち、前の晩に来客が置き忘れた杖を取り上げた。立派な太い木の杖で、握りが球根のように膨らんだ、いわゆる『ペナン・ロイヤー』という種類だった。握りのすぐ下には、幅が一インチ近くある広い銀の帯が巻かれていた。そこには『ジェームズ・モーティマー、M.R.C.S.へ、C.C.H.の友人たちより』と、『一八八四年』という日付が刻まれていた。いかにも昔気質の家庭医が持ち歩きそうな杖で、威厳があり、頑丈で、安心感を与えるものだった。

"Well, Watson, what do you make of it?"

「さて、ワトソン、どう見る?」

Holmes was sitting with his back to me, and I had given him no sign of my occupation.

ホームズは私に背を向けて座っており、私が何をしているか知らせる物音は何も立てていなかった。

"How did you know what I was doing? I believe you have eyes in the back of your head."

「どうして私のしていることが分かったんだ。きみは後頭部にも目があるらしいね」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • hearth-rug(ハースラッグ)… 暖炉の前に敷く敷物難
  • bulbous-headed(バルバスヘッディッド)… 頭部が球根状に膨らんだ難
  • m(エム)… アルファベットのM難
  • r(アー)… アルファベットの小文字r難
  • c(エトセトラ)… アルファベットのC・(&c.で)その他・以下略難
  • h(エイチ)… アルファベットのH難
  • old-fashioned(オウルドファッションド)… 古風な・旧式の
  • practitioner(プラクティショナー)… 開業医・実務家

次の場面:杖から考える Reading the Stick

会えなかった客が残した杖を前に、ホームズは持ち主の姿を考えるようワトソンに促す。刻まれた文字だけでなく、杖そのものの使われ方も材料になる。ワトソンは友人の方法にならい、目の前の品から医師の暮らしを推し量ろうとしている。