この場面の本文と訳
道に来た女性を、ワトソンはステイプルトン嬢だろうと考えている。これから自己紹介をしようとする彼に、相手は先に言葉を向ける。家での穏やかな挨拶とは違う切迫した様子がある。ワトソンは初めて会う相手の話を、その場で聞こうとしている。
"Go back!" she said.「お戻りください」と彼女は言った。
"Go straight back to London, instantly."「すぐに、まっすぐロンドンへお戻りください」
I could only stare at her in stupid surprise.私はただ、あっけに取られて見つめるしかなかった。
Her eyes blazed at me, and she tapped the ground impatiently with her foot.彼女の目は私へ燃えるように向けられ、足はいら立たしげに地面をたたいた。
"Why should I go back?" I asked.「なぜ、戻るべきなのですか?」と私は尋ねた。
"I cannot explain."「説明できません」
She spoke in a low, eager voice, with a curious lisp in her utterance.低く切実な声で、どこか舌足らずな発音だった。
"But for God's sake do what I ask you.「でも、お願いですから、言うとおりにしてください。
Go back and never set foot upon the moor again."戻って、二度と荒れ地へ足を踏み入れないで」
"But I have only just come."「ですが、来たばかりです」