Scene 58 · Notes

解説 場面 58「卓上の封筒」

この場面の解説

ヘンリー卿はホテル宛ての封筒を卓上に置く。ホテルは医師と会ってから決めたばかりで、そこへ行くと事前に分かる手がかりはなかったという。

表現・文法のポイント

was printed in rough characters
ここでprintedは、機械で印刷したという意味ではなく、筆跡を崩さない活字体で書いたこと。次の場面の切り抜きの印刷文字とは区別する。
No one could have known
「誰も知りえなかった」という過去の可能性の否定。ヘンリー卿は宿泊先を決めた時期を根拠にしている。

全文の対訳

He laid an envelope upon the table, and we all bent over it. It was of common quality, greyish in colour. The address, "Sir Henry Baskerville, Northumberland Hotel," was printed in rough characters; the post-mark "Charing Cross," and the date of posting the preceding evening.

彼は封筒を卓上へ置き、私たちは皆、その上へかがみ込んだ。ありふれた質の、灰色がかった封筒だった。『ノーサンバランド・ホテル、ヘンリー・バスカヴィル卿』という宛名が、粗雑な活字体で書かれ、消印は『チャリング・クロス』、投函日は前の晩だった。

"Who knew that you were going to the Northumberland Hotel?" asked Holmes, glancing keenly across at our visitor.

「ノーサンバランド・ホテルへ行くことは、誰がご存じでしたか」とホームズは客を鋭く見ながら尋ねた。

"No one could have known. We only decided after I met Dr. Mortimer."

「誰にも分かるはずがありません。モーティマー医師と会ってから決めたばかりです」

"But Dr. Mortimer was no doubt already stopping there?"

「ですが、モーティマー医師は、すでにそこにお泊まりだったのでは?」

"No, I had been staying with a friend," said the doctor.

「いいえ、私は友人の家に泊まっていました」と医師は言った。

"There was no possible indication that we intended to go to this hotel."

「そのホテルへ行くつもりだと分かるものは、何もありませんでした」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • characters(キャラクターズ)… 文字・人物
  • indication(インディケイション)… 手がかり・しるし・兆し
  • post-mark(ポウストマーク)… 消印
  • preceding(プリスィーディング)… 前の・先立つ
  • glancing(グラーンスィング)… ちらりと見ながら・ちらっと見ること
  • intended(インテンディッド)… 〜するつもりだった
  • quality(クウォリティー)… 品質・質・性質
  • greyish(グレイイッシュ)… 灰色がかった

次の場面:封を開いて Opening the Message

手紙の宛先からは、ヘンリー卿の宿泊先を知る誰かの存在が問題になっている。だが、差出人が何を伝えようとしているのかは、まだ中身を見なければ分からない。ホームズは封筒から紙を取り出し、皆の前にその文面を広げようとしている。