Scene 111 · Notes

解説 場面 111「小屋の外の声」

この場面の解説

小屋の外から聞こえたのはホームズの声だった。ワトソンが外へ出ると、荒れ地の旅行者に変装しながらも、清潔な身なりのホームズが石に座っていた。

表現・文法のポイント

a crushing weight of responsibility
「押しつぶされそうな責任の重み」。ホームズと再会し、一人で事件を担う緊張から解放された心境を表す。
catlike love of personal cleanliness
「猫のような清潔好き」。荒れ地で潜伏していても、ひげやシャツを整えるホームズの性質を示す。

全文の対訳

For a moment or two I sat breathless, hardly able to believe my ears. Then my senses and my voice came back to me, while a crushing weight of responsibility seemed in an instant to be lifted from my soul. That cold, incisive, ironical voice could belong to but one man in all the world.

しばらく私は息をのみ、自分の耳をほとんど信じられずに座っていた。やがて感覚と声が戻り、同時に、押しつぶされそうな責任の重みが一瞬で心から取り除かれたように思えた。あの冷たく鋭い、皮肉な声の主は、世界中にただ一人しかいない。

"Holmes!" I cried—"Holmes!"

「ホームズ」と私は叫んだ。「ホームズ」

"Come out," said he, "and please be careful with the revolver."

「出てきたまえ」と彼は言った。「それから、拳銃には気をつけてくれ」

I stooped under the rude lintel, and there he sat upon a stone outside, his grey eyes dancing with amusement as they fell upon my astonished features. He was thin and worn, but clear and alert, his keen face bronzed by the sun and roughened by the wind. In his tweed suit and cloth cap he looked like any other tourist upon the moor, and he had contrived, with that catlike love of personal cleanliness which was one of his characteristics, that his chin should be as smooth and his linen as perfect as if he were in Baker Street.

私が粗末なまぐさの下をかがんで出ると、彼は外の石に腰掛けていた。灰色の目は、驚きに満ちた私の顔を見て楽しそうに踊っていた。痩せてやつれてはいたが、頭はさえ、注意は少しも怠っていなかった。鋭い顔は日に焼け、風にさらされていた。ツイードの服に布製の帽子をかぶった姿は、荒れ地のごく普通の旅行者に見えた。しかし、彼の特徴である猫のような清潔好きはここでも変わらず、あごはベイカー・ストリートにいるときのようにきれいにそられ、シャツもしみ一つなかった。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • incisive(インサイスィヴ)… 鋭い・切れ味のある難
  • ironical(アイロニカル)… 皮肉な・反語的な難
  • lintel(リンテル)… まぐさ・出入り口上部の横材難
  • contrived(コントライヴド)… 工夫して実現した・どうにか成し遂げた難
  • catlike(キャットライク)… 猫のような・しなやかな難
  • characteristics(キャラクタリスティックス)… 特徴(characteristic の複数形)
  • responsibility(リスポンスィビリティー)… 責任
  • cleanliness(クレンリネス)… 清潔さ・清潔好き

次の場面:再会の言葉 Words of Reunion

荒れ地でホームズと会い、ワトソンは喜びと驚きを隠せない。なぜここにいるのか、尋ねたいことは幾つもある。まずは久しぶりに言葉を交わし、互いの様子を確かめる。ロンドンを離れてから続けてきた現地での仕事を、目の前の友人へ、直接話せる機会でもある。