Scene 125 · Notes

解説 場面 125「音のする方へ」

この場面の解説

悲鳴は前より近く大きくなり、ホームズまでも心の底から動揺する。そこへ音楽的でありながら不吉な、海鳴りのような低いうなり声が重なる。

表現・文法のポイント

the man of iron
「鋼鉄の男」。普段は感情に動じないホームズの強さを表す比喩である。
rising and falling
「大きくなったり小さくなったり」。うなり声が波のように強弱を繰り返す。

全文の対訳

The cry had been loud on account of its vehemence, but it had pealed out from somewhere far off on the shadowy plain. Now it burst upon our ears, nearer, louder, more urgent than before.

叫び声は激しかったため大きく聞こえたが、影に沈んだ平原のどこか遠くから響いてきたものだった。その声が再び耳へ飛び込んできた。今度は前より近く、大きく、切羽詰まっていた。

"Where is it?" Holmes whispered; and I knew from the thrill of his voice that he, the man of iron, was shaken to the soul. "Where is it, Watson?"

「どこだ」ホームズはささやいた。その声の震えから、鋼鉄のようなあの男までも、心の奥底から動揺していると分かった。「どこだ、ワトソン」

"There, I think." I pointed into the darkness.

「あっちだと思う」私は闇の中を指さした。

"No, there!"

「違う、あっちだ」

Again the agonised cry swept through the silent night, louder and much nearer than ever. And a new sound mingled with it, a deep, muttered rumble, musical and yet menacing, rising and falling like the low, constant murmur of the sea.

苦痛に満ちた叫び声が、再び静かな夜を駆け抜けた。これまでよりも大きく、はるかに近かった。そして、それに新たな音が交じった。低くくぐもったうなり声で、音楽的でありながら不吉でもあり、海の低く絶え間ないざわめきのように、大きくなったり小さくなったりしていた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • vehemence(ヴィーアマンス)… 激しさ・熱烈さ難
  • pealed(ピールド)… 大きく響いた(pealの過去形)難
  • mingled(ミングルド)… 混ざり合った難
  • somewhere(サムウェア)… どこかに・どこかへ
  • whispered(ウィスパード)… ささやかれた・ささやいた
  • agonised(アガナイズド)… 苦しみにさいなまれた
  • muttered(マタード)… 低くくぐもった・つぶやいた・ぶつぶつ言った
  • menacing(メナスィング)… 脅すような・威嚇する

次の場面:闇へ走り出す Into the Darkness

遠くの音は続き、ホームズとワトソンは暗い荒れ地を前にしている。どこで何が起きているのか、まだ目には見えない。聞こえる方角を頼りに、次の行動へ移ろうとしている。急いで進むとしても、岩の多い土地の夜道では、どの方向へ向かうかを、そのつど考えねばならない。