Scene 142 · Notes

解説 場面 142「館への帰り道」

この場面の解説

二人は宿泊の誘いを断って館へ向かい、ステイプルトンを一人で帰らせる。ホームズは、計画と違う人物が死んだと知っても即座に平静を装った敵の大胆さを認める。

表現・文法のポイント

at close grips
「間近で組み合って」。物理的な取っ組み合いに限らず、敵と決定的な直接対決に入ること。
worthy of our steel
「われわれの剣に値する」。steelは剣を指し、自分たちが本気で戦うに値する強敵という比喩。

全文の対訳

And so it was arranged. Resisting Stapleton's offer of hospitality, Holmes and I set off to Baskerville Hall, leaving the naturalist to return alone. Looking back we saw the figure moving slowly away over the broad moor, and behind him that one black smudge on the silvered slope which showed where the man was lying who had come so horribly to his end.

そして、そのように決まった。ホームズと私はステイプルトンの宿泊の申し出を断り、バスカヴィル館へ向かって歩き出した。博物学者は一人で帰らせた。振り返ると、彼の人影が広々とした荒れ地をゆっくり遠ざかり、その後ろの月に照らされた斜面には、恐ろしい最期を遂げた男が横たわる場所を示す、一つの黒いしみが残っていた。

"We're at close grips at last," said Holmes as we walked together across the moor. "What a nerve the fellow has! How he pulled himself together in the face of what must have been a paralyzing shock when he found that the wrong man had fallen a victim to his plot. I told you in London, Watson, and I tell you now again, that we have never had a foeman more worthy of our steel."

「ついに彼と間近で組み合うところまで来た」と、荒れ地を並んで歩きながらホームズは言った。「たいした度胸の男だ。自分の計画の犠牲になったのが別人だと知ったとき、必ずや身がすくむほどの衝撃を受けたはずなのに、よくもあれほど自分を立て直したものだ。ワトソン、ロンドンでも言ったが、今ももう一度言おう。これほどわれわれの相手にふさわしい強敵は、かつていなかった」

"I am sorry that he has seen you."

「君の姿を彼に見られたのが残念だ」

"And so was I at first. But there was no getting out of it."

「私も初めはそう思った。しかし、避けようがなかった」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • hospitality(ホスピタリティー)… もてなし・歓待難
  • silvered(スィルヴァード)… 銀色に照らされた・銀めっきした難
  • paralyzing(パラライジング)… 体がすくむような・まひさせる難
  • foeman(フォウマン)… 敵・対戦相手(古風)難
  • naturalist(ナチュラリスト)… 博物学者・自然研究家
  • resisting(リズィスティング)… 断って・抵抗して
  • horribly(ホリブリー)… 恐ろしく・ひどく
  • figure(フィギュア)… 姿・人影

次の場面:相手の出方 The Next Move

ホームズがここにいると分かったことで、相手はどう考えるのだろうか。帰路のワトソンは、その影響を友人に尋ねる。これまでの調査と今夜の会話を踏まえた相談が続く。一つの出会いが、ここから先にどう関わるかを考えることも、調査を続けるうえでは大切になる。