Scene 84 · Notes

解説 場面 84「用件を伝える」

この場面の解説

ローラは父と絶縁同然であり、チャールズ卿らの助けがなければ飢えていたと語る。故人について来たと聞くと動揺しつつ、援助を受けた事実と手紙のやり取りを認める。

表現・文法のポイント

for all that my father cared
「父はほとんど気にもかけなかった」。父が自分を顧みず、飢え死にしても構わないほどだったという非難を込めた言い方。
support myself
「自活する」。自分の体を支える姿勢ではなく、自分で生活費を得ることを指す。

全文の対訳

It was a clumsy introduction, and the lady made me feel it. "There is nothing in common between my father and me," she said. "I owe him nothing, and his friends are not mine. If it were not for the late Sir Charles Baskerville and some other kind hearts I might have starved for all that my father cared."

不器用な切り出し方であり、彼女もそうと分からせる態度を取った。「父と私には、何のつながりもありません」と彼女は言った。「父には何の恩もありませんし、父の友人が私の友人ということもありません。亡きチャールズ・バスカヴィル卿や、ほかの心ある方々がいなければ、父に放っておかれ、私は飢え死にしていたかもしれません」

"It was about the late Sir Charles Baskerville that I have come here to see you."

「私がここへ来たのは、その亡きチャールズ・バスカヴィル卿について、あなたに伺うためです」

The freckles started out on the lady's face.

彼女の顔に、そばかすがはっきり浮かび上がった。

"What can I tell you about him?" she asked, and her fingers played nervously over the stops of her typewriter.

「あの方について、私が何をお話しできるでしょう」と彼女は尋ね、指を神経質にタイプライターのキーの上で動かした。

"You knew him, did you not?"

「あの方をご存じだったのですね」

"I have already said that I owe a great deal to his kindness. If I am able to support myself it is largely due to the interest which he took in my unhappy situation."

「先ほども申しましたように、あの方のご親切には大きな恩があります。私が自活できているのも、私の不幸な境遇を気にかけてくださったおかげなのです」

"Did you correspond with him?"

「手紙のやり取りをしていましたか」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • introduction(イントロダクション)… 話の切り出し・前置き・(名前などを)出すこと・紹介・導入
  • correspond(コレスポンド)… 文通する・一致する
  • nervously(ナーヴァスリー)… そわそわして・神経質に
  • situation(スィチュエイション)… 職、勤め口・状況・事態
  • freckles(フレクルズ)… そばかす(freckleの複数)
  • starved(スターヴド)… 飢えた
  • support(サポート)… 裏付け・支えること
  • largely(ラージリー)… 主として・大部分は

次の場面:質問の理由 The Reason for the Questions

チャールズ卿との手紙のやり取りを問われ、夫人はワトソンを見る。突然の訪問者が何を知りたいのか、彼女にも確認したい点がある。事務室の会話が続く。初対面の人から昔の私事を尋ねられる側にも、何を答えるかを考えるための時間が必要だろう。