Scene 92 · Notes

解説 場面 92「暮らしの事情」

この場面の解説

ローラは夫から逃れて自由を得るため、費用の援助をチャールズ卿へ頼もうとしていた。しかし別の者から助けが届いたため門へ行かず、翌朝に死亡記事を見て説明の手紙も出さなかったという。

表現・文法のポイント

The law is upon his side
「法律は夫の側にある」。当時の制度では、嫌う夫から妻が容易に離れられない事情を示す。
instituted divorce proceedings
「離婚手続きを開始した」。実際に当時その手続きを始めていたかが、説明を確かめる客観的な手がかりになる。

全文の対訳

"I have heard so much."

「それだけは聞いています」

"My life has been one incessant persecution from a husband whom I abhor. The law is upon his side, and every day I am faced by the possibility that he may force me to live with him. At the time that I wrote this letter to Sir Charles I had learned that there was a prospect of my regaining my freedom if certain expenses could be met. It meant everything to me—peace of mind, happiness, self-respect—everything. I knew Sir Charles's generosity, and I thought that if he heard the story from my own lips he would help me."

「私の人生は、憎んでいる夫から絶えず責めさいなまれる毎日でした。法律は夫の側にあり、いつ夫に強いられて、また一緒に暮らさなければならなくなるか分かりません。チャールズ卿へあの手紙を書いたころ、一定の費用さえ工面できれば、自由を取り戻せる見込みがあると知ったのです。それは私にとってすべてでした——心の平穏、幸福、自尊心、そのすべてです。チャールズ卿が寛大な方だと知っていたので、私自身の口から事情をお話しすれば、助けてくださると思いました」

"Then how is it that you did not go?"

「では、なぜ行かなかったのです」

"Because I received help in the interval from another source."

「その間に、別の方から助けを得たからです」

"Why then, did you not write to Sir Charles and explain this?"

「それなら、なぜチャールズ卿へ手紙で事情を説明しなかったのです」

"So I should have done had I not seen his death in the paper next morning."

「翌朝の新聞であの方の死を目にしなければ、そうしていたでしょう」

The woman's story hung coherently together, and all my questions were unable to shake it. I could only check it by finding if she had, indeed, instituted divorce proceedings against her husband at or about the time of the tragedy.

彼女の話は筋が通っており、どのように尋ねても崩すことができなかった。確かめるには、悲劇のころに実際に夫との離婚手続きを始めていたかどうかを調べるしかなかった。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • incessant(インセスント)… 絶え間ない難
  • abhor(アブホー)… ひどく嫌う難
  • coherently(コウヒアラントリー)… 筋道立てて難
  • instituted(インスティテューティッド)… 始められた・実施された・(訴訟が)起こされた・提起された・(制度・会などを)設けた・始めた(institute の過去形)難
  • self-respect(セルフリスペクト)… 自尊心
  • persecution(パースィキューション)… 迫害・執拗な追及
  • possibility(ポッスィビリティー)… 可能性
  • proceedings(プロスィーディングズ)… 法的な手続き・訴訟手続き・成り行き・一連の出来事・訴訟手続き

次の場面:訪問を終えて After the Interview

夫人から話を聞いたワトソンは、内容を考え直そうとしている。説明としてつながる部分と、なお確認したい部分がある。町での訪問を終え、次の手がかりを検討する。相手の話を聞くことと、裏付けを得ることは別であり、調査を進めるには、その違いを考えたい。