Scene 01 · Notes

解説 場面 1「赤毛の依頼人」

この場面の解説

去年の秋、ワトソンがホームズを訪ねると、ホームズは燃えるような赤毛の太った紳士と話し込んでいた。遠慮して出ようとするワトソンを引き止め、ホームズは依頼人のウィルソン氏に、ワトソンを頼れる相棒として紹介する。

表現・文法のポイント

with fiery red hair
fiery は fire の形容詞形で「火のような、燃えるような」。赤毛の鮮やかさを炎にたとえ、この物語の鍵となる髪の色を最初の一文で強く印象づけている。綴りは firey ではなく fiery となる点に注意。
You could not possibly have come at a better time
否定+比較級で最上級の意味になる形。「これ以上よい時に来ることはできなかっただろう」から「まさに最高のタイミングだ」となる。could have come は過去についての仮定で、possibly は否定を強めて「どうやっても」の意味を添える。
he will be of the utmost use to me in yours also
of use は useful と同じ意味で、of+抽象名詞が形容詞の働きをする(of importance=important)。utmost は「最大限の」。yours は your cases を指し、「あなたの事件でも大いに役立ってくれる」という意味だ。
gave a bob of greeting
bob は頭や体をひょいと上下させる動き。a bob of greeting で「ひょいと頭を下げる会釈」となる。動詞でも bob one's head「ぴょこんと頭を下げる」と使う。太った紳士の短くせわしない動きが目に浮かぶ表現だ。

背景・時代

赤毛(red hair)
赤毛はスコットランドやアイルランドに比較的多いが、それでも人口の一割ほどで、イングランドではさらに少ない。人目を引く特徴で、からかいの的にもなりやすかった。燃えるような赤毛は、それだけで強い印象を与えたのだ。

全文の対訳

I had called upon my friend, Mr. Sherlock Holmes, one day in the autumn of last year and found him in deep conversation with a very stout, florid-faced, elderly gentleman with fiery red hair. With an apology for my intrusion, I was about to withdraw when Holmes pulled me abruptly into the room and closed the door behind me.

去年の秋のある日、友人のシャーロック・ホームズ氏を訪ねると、彼は燃えるような赤毛の、ひどく太って赤ら顔をした年配の紳士と話し込んでいた。邪魔をしたことを詫びて引き下がろうとすると、ホームズは私をいきなり部屋の中へ引っぱり込み、私の背後でドアを閉めた。

"You could not possibly have come at a better time, my dear Watson," he said cordially.

「ワトソン、これ以上ないほどいい時に来てくれたね」と彼は愛想よく言った。

"I was afraid that you were engaged."

「取り込み中じゃないかと思ったんだが」

"So I am. Very much so."

「そのとおり、取り込み中さ。それも大いにね」

"Then I can wait in the next room."

「それなら隣の部屋で待っているよ」

"Not at all. This gentleman, Mr. Wilson, has been my partner and helper in many of my most successful cases, and I have no doubt that he will be of the utmost use to me in yours also."

「その必要はまったくない。ウィルソンさん、こちらの紳士は、私がうまく解決した事件の多くで相棒として手を貸してくれた人でね、あなたの件でもきっと大いに役立ってくれるはずだ」

The stout gentleman half rose from his chair and gave a bob of greeting, with a quick little questioning glance from his small fat-encircled eyes.

太った紳士は椅子から半ば腰を浮かせてひょいと会釈し、肉に埋もれた小さな目で、探るような視線をすばやくちらりと向けた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • florid-faced(フロリッドフェイスト)… 赤ら顔の難
  • intrusion(イントルージョン)… (勝手に)入り込むこと・邪魔・侵入難
  • cordially(コーディアリー)… 愛想よく・心をこめて難
  • bob(ボブ)… (頭や体を)ひょいと動かすこと・会釈・ひょいと上下に動く難
  • fat-encircled(ファットエンサークルド)… 脂肪に囲まれた・肉に埋もれた難
  • withdraw(ウィズドロー)… 引き下がる・退出する・(お金を)引き出す
  • abruptly(アブラプトリー)… いきなり・突然・ぶっきらぼうに
  • possibly(ポッスィブリー)… (否定文で)どうしても・とても(〜ない)・ことによると

次の場面:奇妙な事件好き A Taste for the Bizarre

ウィルソン氏を前に、ホームズはワトソンに長椅子をすすめ、指先を合わせて考える構えに入る。そしてワトソンに語りかける。きみも奇妙なことが好きだろう、だから私の事件を熱心に書き、少々脚色までしてきたのだ、と。さらに、人生は想像よりずっと大胆だという持論を持ち出すが、ワトソンはかつてそれを疑っていた。