Scene 05 · Notes

解説 場面 5「一目で見抜く」

この場面の解説

ワトソンの観察に気づいたホームズは、客について、力仕事の経験、嗅ぎたばこ、フリーメイソン、中国滞在、最近の書き物という五つの事実を言い当てる。驚いたウィルソン氏は、船大工から身を起こしたことを認め、どうして分かったのかと尋ねる。

表現・文法のポイント

took in my occupation
take in は「(ひと目で)見て取る、理解する」。occupation はここでは「職業」ではなく「していること、取りかかっていること」の意味。ワトソンが客をじろじろ観察している様子を、ホームズはすぐに見抜いたのだ。
Beyond the obvious facts
beyond は「~以外に、~のほかに」。後ろに続く五つの that 節が facts の中身を説明している(同格の that)。最後の I can deduce nothing else と組み合わせ、「これくらいしか分からない」とさらりと言うのがホームズらしい皮肉だ。
in the name of good-fortune
in the name of ~ は驚きや苛立ちを強める決まり文句で、in the name of heaven「いったいぜんたい」が普通の形。ウィルソンはそれを good-fortune(幸運)に言い換えていて、素朴な人柄がにじむ。
It's as true as gospel
gospel は聖書の「福音書」のこと。as true as gospel で「福音書のように真実だ」から「まったくそのとおりだ」となる。gospel truth「絶対の真実」とも言う。as ~ as ... の比較を使った強調だ。

背景・時代

嗅ぎたばこ(snuff)
粉にしたたばこをひとつまみ鼻から吸う習慣。18世紀から19世紀のイギリスで広く好まれ、小さな嗅ぎたばこ入れを持ち歩く人も多かった。ホームズ物語にもたびたび登場する。
フリーメイソン(Freemason)
中世の石工の組合に由来するとされる友愛団体。会員同士の助け合いを重んじ、独自の儀式や印を持つ。ヴィクトリア朝のイギリスでは、商人や紳士の間に多くの会員がいた。

全文の対訳

Sherlock Holmes' quick eye took in my occupation, and he shook his head with a smile as he noticed my questioning glances. "Beyond the obvious facts that he has at some time done manual labour, that he takes snuff, that he is a Freemason, that he has been in China, and that he has done a considerable amount of writing lately, I can deduce nothing else."

シャーロック・ホームズの鋭い目は、私のしていることをすぐに見て取った。問いかけるような私の視線に気づくと、彼は笑って首を振った。「以前に力仕事をしていたこと、嗅ぎたばこをやること、フリーメイソンであること、中国にいたことがあること、そして最近かなりの量の書き物をしていること。そういう分かりきった事実のほかは、何も推理できないね」

Mr. Jabez Wilson started up in his chair, with his forefinger upon the paper, but his eyes upon my companion.

ジェイベズ・ウィルソン氏は椅子の上で跳び上がり、人差し指は新聞に置いたまま、目だけを私の友人に向けた。

"How, in the name of good-fortune, did you know all that, Mr. Holmes?" he asked. "How did you know, for example, that I did manual labour. It's as true as gospel, for I began as a ship's carpenter."

「いったいぜんたい、どうしてそんなことまで分かったんです、ホームズさん?」と彼は尋ねた。「たとえば、私が力仕事をしていたことが、どうして分かったんです。まったくそのとおりでしてね、私は船大工から始めたんですよ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • snuff(スナフ)… 嗅ぎたばこ難
  • freemason(フリーメイスン)… フリーメイソン(友愛団体の会員)難
  • gospel(ゴスペル)… 福音(書)・絶対の真実難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な
  • good-fortune(グッドフォーチュン)… 幸運(in the name of good-fortune で、いったいぜんたい)
  • occupation(オキュペイション)… していること・従事していること・職業
  • forefinger(フォーフィンガー)… 人差し指
  • companion(カンパニオン)… 仲間・相棒

次の場面:推理の種明かし The Clues Explained

どうして分かったのかと問うウィルソン氏に、ホームズは種明かしをする。力仕事は大きな右手から、フリーメイソンは胸元のピンから、書き物は袖口の光り方とひじの擦れから読み取ったのだ。言われてみれば当たり前のことばかりで、ウィルソン氏も、なるほどそうだったと納得する。